外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法(入管法)改正案について、
国会での審議入りを巡って与野党で駆け引きがありましたが、13日の衆院
本会議で審議入りすることになった、と報じられています。政府は、経済界からの
強い要望で、外国人労働者の受け入れを拡大することにしていますが、移民政策
には反対の安倍政権のコアな支持者である保守層に配慮してか、移民政策では
ないと言い続けていることが、現実の姿とかい離していると思います。法務省に
よると、昨年末で日本で暮らしている在留外国人は約256万人いて、移民を受け
入れを積極的に進めている諸外国に比べると少ない人数ですが、京都府の人口
に匹敵するそうです。この1年で約18万人増えて、増加率も高くなっています。
超少子高齢社会の日本で、持続可能な生産を続けるには、もちろん女性や高齢
者が働きやすくすることも大事ですが、すでに外国人労働者がいないと成り立た
ない企業などが増えています。外国人を受け入れるなら、再三指摘しているように
「労働力」が入ってくるのではなく、「労働する人」が入ってくるので、環境整備が
必要です。ところが、生煮えのまま出されている政府の改正案について、次々に
移民を否定するような、働く人の人権を考えないような考え方が明らかになるので
危惧しています。ひとつは、外国人労働者の扶養親族について、医保保健の適用
に国内居住要件をつける、ということ。日本人の場合は、海外に居住している家族
にも適用されるので、公平ではないと思います。しかも、10年以上たたないと家族
を呼び寄せられない仕組みなので、人権問題と考えられます。また、技能実習
制度の課題をそのままにして、そこから転換できることが考えられていますが、
パワハラやいじめによって自殺する人が絶えません。行方不明になっている実習
生が2018年上半期に4279人もいて過去最高だった昨年のペースを上回って
いるのですから。そして深夜まで働いても時給300円というケースもあると報じ
られています。また、法務省は、永住許可のガイドラインを見直して、日本に10年
以上暮らし、このうち5年以上は就労資格などを持っていなければならないという
規定について、技能実習生や新たに創設する特定技能1号で滞在している間は、
この5年に含めない方向で検討している、ということ。このように、都合のよい
労働力を入れるという身勝手な仕組みで、入ってくる労働者の人権を守らないよう
では、働く場所として日本は選んでもらえないと思います。拙速に生煮えの仕組み
を、この臨時国会で作るのではなく、もっと時間をかけて、移民政策をどう考える
のかなど基本的なところから、国会で議論してもらいたいものです。