世界の情勢が、ますます右傾化していくようで心配です。ひとつは、南米ブラジル

 

で、10月28日、現職のテメル氏の任期満了に伴う大統領選挙の決選投票が

 

あり、軍事政権の称賛や差別的な発言などで「ブラジルのトランプ」と呼ばれる

 

ジゃイル・ボルソナロ下院議員(63)が、初当選を果たしました。任期は、来年

 

1月1日から4年間です。BRICKS(新興5ヶ国)を中国やロシアなどと構成する

 

大国のブラジルにも、ポピュリスト(大衆迎合政治家)の指導者が誕生することに

 

なり、世界経済や世界の民主主義などに影響を与えるであろうと、懸念されて

 

います。ボルソナロ氏は、同性愛者や女性、黒人などへの差別的発言で知られる

 

と報じられていて、閣僚に多数の軍人を登用する意向を示している、とのこと。

 

こうした人物を大統領に選んだのは、左派・労働党に対する国民の強い反発で、

 

政界の汚職事件、治安悪化などへの批判による、とされていますが、具体的な

 

政策は示されていないそうです。ブラジルでも、「自国第一主義」や軍事独裁政権

 

を称賛する大統領が誕生することは、とても心配です。

 

一方、ドイツのメルケル首相が、10月29日の記者会見で、自身が率いる保守

 

与党キリスト教民主同盟(CDU)の12月の党首選に出馬しないことを表明しま

 

した。2021年までの残りの首相任期は務めるとしています。メルケル氏は、

 

28日の西部ヘッセン州議会選でCDUが大敗を喫した責任を取った形、とのこと。

 

しかし、党首でなくなれば、政権内での求心力が低下すると、懸念されています。

 

メルケル氏は、G7(先進国主の会議)でも最長の任期で、自由や人権という

 

価値観を重視してきた欧州のリーダーです。各国で右寄りの、自国第一を掲げる

 

政党が勢いを増す中、民主主義を守る騎手として、確固たる地位を築いてきた

 

はずでした。しかし、難民を受け入れるという政策が批判され、このような事態に

 

なっています。難民政策は、ほんとうに難しいと思います。メルケル氏は、EUの

 

予算を最も多く負担する国のトップとして、ギリシャ発の債務危機、難民問題の

 

対応など、EU全体の問題について、議論を主導してきました。EUは、より加盟国

 

の結びつきを強くして、通貨ユーロを使う国で共通予算を作ったり、難民の受け

 

入れ負担を公平にしたり等、改革案を議論している最中です。メルケル氏が、党首

 

でなくなり、党に配慮すれば、EUの政策論議が停滞するおそれがある、とされて

 

います。ドイツの主要紙の1面には「メルケル時代の終わり」の見出しが躍った

 

そうです。ドイツとともにEUを引っ張ってきた、フランスのマクロン大統領は、

 

「メルケル氏は欧州の価値が何かを忘れることはなかった。欧州では極右が台頭

 

し、状況は全く楽観できない」としています。メルケル政権が不安定化することへの

 

懸念は大きくなっています。欧州全体をみても、今年総選挙があったイタリアや

 

スウェーデンでも、移民・難民排除を唱える極右が躍進しています。メルケル氏の

 

求心力が低下すると、各国で極右の勢力が一層勢いを増すことが、こちらも心配

 

です。