サウジアラビア政府を批判してきた米国在住のサウジ人著名記者ジャマル・

 

カジョギ氏が、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で殺害された事件

 

で、各国が危機感を抱いています。カジョギ氏について、サウジアラビア政府は、

 

当初は総領事館を出てから行方不明になったと逃げていましたが、各国からの

 

批判、そしてトルコ政府の捜索で殺害時の録音テープがあると報じられている等

 

のことからか、20日になって、総領事館内で、「口論と格闘」の結果、カショギ氏が

 

死亡したとする暫定捜査結果を発表し、死亡を初めて認めました。トルコ当局が

 

入手した音声データでは、カショギ氏は館内に入って間もなく暴行され、拷問を

 

受けた末に殺害された、とされています。それによると、現場には、サウジ内務省

 

の解剖を専門とする法医学者がいて、カショギ氏の体を切断した、とのこと。

 

現代に、こんなことが起こるのかと、身の毛がよだつ思いです。死亡自体は認めた

 

サウジ政府ですが、最も関心がもたれているムハンマド皇太子の関与について

 

は、全く触れていません。報道されているところでは、カショギ氏殺害の前後に、

 

15人もの皇太子に近いサウジ人が、トルコに入国し、総領事館に行き、出国して

 

いった、ということです。これでは、疑いを持つのが普通です。カショギ氏の最後の

 

コラムが、死後、ワシントンポスト紙に掲載されました。タイトルは、「アラブ世界が

 

最も必要としているのは表現の自由」というものです。カショギ氏は「大多数の

 

国民がウソの物語の犠牲者になっている。」とし、また友人の著名なコラムニスト

 

が「残念ながら、サウジの体制に反するコメントをしたため刑務所にいる。」などと

 

述べています。身をもって、言論の自由を守るべき、という主張を死をもって、

 

世界に示しているように思います。当初は、武器の取り引きなどのためにサウジを

 

擁護していたトランプ大統領も、ようやく一転して「明らかなごまかしやうそが

 

あった」と不満を表明しました。民主党の議員からは「トランプ氏がやるべきは

 

サウジのプロパガンダ(政治宣伝)を後押しすることではなく、説明責任を果たさ

 

せることだ」と批判しています。欧州からも、捜査の不十分さを指摘する声が

 

上がっています。ドイツのメルケル首相は「これまでの経過報告は十分ではない」

 

と声明を発表。マース外相は「サウジへの武器輸出について肯定的な決定をする

 

理由はない」と、武器輸出を見直す考えを明らかにしました。フランスのルドリアン

 

外相は「多くの疑問が残されており、徹底的な捜査が必要だ」としています。

 

欧州連合(EU)も「殺害された状況と責任を解明する、透明で信頼のできる捜査を

 

求める」としています。日本が、何も表明していないのは、気になります。今後、

 

しっかり説明責任が果たされ、少しでも表現の自由が守られるようになることを

 

願っています。