油圧機器メーカーのKYBと子会社が、免震・制振装置の性能検査記録データを

 

改ざんしていたことがわかりました。情報不足ということもあって、全国の企業や

 

地方自治体では、疑心暗鬼になり混乱が起きています。KYBの不正は、本体の

 

岐阜南工場(岐阜県可児市)から、子会社カヤバシステムマシナリー(東京)の

 

工場(津市)に引き継がれてきた、ということです。その方法は、検査数値が基準

 

を逸脱した場合に必要のない係数を掛け、合格の範囲内に修正する、という計画

 

的なものだった、と報じられています。免震装置では、大臣認定の基準を満たさ

 

ない製品が499本、顧客に約束した基準を外れたものが1914本、調査中のもの

 

が5137本あり、合わせれば出荷総数の7割を超える、ということです。不正

 

もしくは疑いのある製品を使っている建物は1千ヶ所近く、病院、役所、大規模な

 

商業施設など、不特定多数の人が出入りする建物も多く、安全にかかわること

 

なので、許せない不正だと思います。品質の良さを誇っていたはずの日本の

 

ものづくり、製造業で、いったい何が起きているのでしょうか。問題のある地震の

 

揺れを抑える免震用オイルダンパーと制振用オイルダンパーが使われた疑いの

 

ある主な建物は、東京都庁、慶応大学病院、東京スカイツリー、東京駅丸の内

 

駅舎、愛知県本庁舎、名古屋市役所本庁舎、大阪府庁本館、熊本市民病院など

 

が、挙げられています。連日、報道が続き、私が住んでいる長野県でも、県庁

 

本館棟と県庁議会棟、岡谷市民病院、塩尻市市民交流センターなどが報じられて

 

います。会社の説明によれば、記録に残っているもので2003年から不正があり、

 

少なくとも8人の検査員が口頭で引き継いでいたそうです。本来は、基準から外れ

 

た製品は分解・調整し、再度検査するのが適正な対応ですが、それには約5時間

 

かかるため、検査データを書き換えていたとされています。不正品をすべて交換

 

するには、2年近くかかると見込まれていて、震度が強くても倒壊などの恐れは

 

ないとしていますが、心配であることには変わりがありません。KYBは、外部の

 

調査委員会などを設けて、全容を明らかにし、原因を分析して、再発防止策を

 

徹底するべきだと思います。それにしても、検査データ改ざん、と聞いて、またかと

 

思うのは、残念なことです。3年前には、東洋ゴム工業の免震ゴムで、性能偽装が

 

明らかになりました。その教訓がいかされていないということになります。東洋ゴム

 

工業の場合は、対象となった154棟のうち、工事が完了したのは今年9月時点で

 

98棟にすぎず、特別損失は1400億円を超えている、とのこと。KYBは、建物の

 

所有者や利用者に、安全性について早急に丁寧に説明する必要があると思い

 

ます。それにしても、神戸製鋼所、三菱マテリアル、東レ、日産自動車、SUBARU

 

などで、検査データ改ざんが、これまでに明らかになっています。国際的信用も

 

地に落ちかねません。ものづくり日本の技術、品質、誇りを保つことに、しっかり

 

向き合ってほしいものです。