経団連は、昨日9日、会長・副会長会議を開き、大手企業の採用面接などの
解禁日を定めた指針を、2021年春入社の学生から廃止することを正式に決定
しました。経団連の現在の指針は、大学3年生が該当する2020年入社が最後に
なります。就職活動のルールは、1953年に、政府と大学、産業界が選考日程を
申し合わせた「就職協定」が結ばれて以来、たびたびルールの変更は行われて
きましたが、何らかの形で存続してきました。新たなルールづくりは、政府主導に
なり、大学側や経済界も参加する関係省庁連絡会議で、今月15日に協議を
始める、ということです。経団連の中西会長は、大学4年生の6月に採用選考を
解禁する現在のルールが守られずに形骸化していると指摘しています。指針を
廃止する理由について「ルールを作って徹底させることは経団連の役割では
ない。強制力も持っていない。」と述べました。しかし、外資系やIT系企業などの
採用活動の前倒しに伴って、就職情報会社の幹部は、「すでに形骸化が指摘
されているルールが、ますます守られなくなる」と懸念している、と報じられて
います。就職活動の指針廃止については、大学関係者でつくる就職問題懇談会
の山口座長が、批判する声明を出し、大学と企業が互いに尊重する枠組みが
不可欠として、「政府による対応の打開を期待したい」という要請もしています。
大学関係者は、「経団連企業もルールを守らなくてもよくなれば、学業への
影響が出る」と話しています。一方、「新卒一括採用」を見直す一歩になる、という
意見もあります。これが、多様な採用のきっかけになれば、それはよいことだと
思います。しかし、大企業の採用が終わってから動き出していた中小企業への
影響や、早くから就職活動をすることによって、学業に影響が出るなどの課題も
多くあります。政府主導になるという関係省庁連絡会議は、文部科学省、厚生
労働省などが参加し、内閣官房が取りまとめる形で、年内にも就職活動の新
ルールを作って公表する予定、とのこと。経団連と、大学で構成する就職問題
懇談会がオブザーバーとして参加します。新卒一括採用のあり方について、
政府の未来投資会議で議論を始めているそうですから、全体像を見直す中で、
学生たちも企業も納得のいくルールを作ってほしいと思います。