自民党の杉田水脈(みお)衆院議員(比例中国ブロック)が、月刊誌への寄稿で、

 

LGBT(性的少数者)のカップルへの行政支援について「彼ら彼女らは子どもを

 

作らない。つまり「生産性」がない。そこに税金を投入することが果たしていいのか

 

どうか」と否定的な見解を示したことが、批判を呼んでいます。寄稿は今月18日

 

発売の「新潮45」が掲載しました。明らかに人権意識を欠いた発言で、こういう

 

意見の持ち主が国会議員をしていることに疑問を持ちます。SNSで「優生思想だ」

 

といった批判が広がると、杉田議員は、自身のツイッターで、先輩議員から

 

「間違ったこと言ってないんだから、胸張っていればいいよ」などと声をかけられた

 

として、「自民党の懐の深さを感じます」と投稿しました。党内からも批判が相次ぎ

 

ましたが、自民党の二階幹事長は会見で「多様性を受け入れていく社会の実現を

 

図ることが大事だ」と指摘し、一方で「人それぞれ政治的立場はもとより、いろんな

 

人生観もある」とも語り、問題視しない考えを示しました。人権侵害を、人生観で

 

片づけようとする姿勢には、大きな違和感を持ちます。国民民主党の玉木代表

 

は「ナチスの優生思想にも通じるような問題で許すことはできない」と批判しま

 

した。また、立憲民主党の山内国対委員長代理は「子どもを産まない人間は価値

 

がない、みたいな言い方で言語道断だ」と非難しています。共産党の小池書記

 

局長も「個人の尊厳を根本から否定する妄言。党の責任が問われる」と批判しま

 

した。LGBT当事者からも、当然ながら批判の声が相次いでいます。レズビアンを

 

公表し、企業や団体向けに講演や研修をする増原さんは「相模原の障害者殺傷

 

事件や同性愛者を虐殺したナチスの優生思想とリンクする」としている、と報じ

 

られています。一昨日27日には、自民党本部前などに多くの人が集まり、杉田氏

 

の辞職を求めました。多様性を意味する虹色の旗や「生産性で差別するな」などと

 

書かれたプラカードを持った人たちが、抗議の声をあげました。抗議を呼びかけた

 

団体によると、参加者は約5千人にのぼった、とのこと。「LGBTだけでなく、障害

 

を持った人や高齢の人々など、どんな人も生きているだけで尊い。生産性という

 

尺度で人間の価値を判断するなんてあってはならない」など憤りの声があがったと

 

いうことです。その通りだと思います。杉田氏は、当初は日本維新の会から立候補

 

し、昨年10月の衆院選で自民党の公認になりました。これまでも同様の主張を

 

公然と繰り返してきて、男女共同参画にも反対の意見を国会でも述べています。

 

地方自治体の同性カップル公認制度について「LGBT支援策が必要でない理由」

 

としてブログを投稿し、「生産性のあるものと無いものを同列に扱うには無理が

 

ある。差別ではなく区別」と記しています。インターネット番組でも「生産性がない

 

同性愛者の皆さんに税金を使って支援をする。どこに大義名分があるんですか」

 

と語っています。異性のカップルであっても、子どもを産むか産まないかは、個人

 

の選択であることは、いうまでもありません。それを「生産性」ということで評価する

 

ことには、ゾッとします。一強多弱の強い側の自民党内で、若手議員などから批判

 

があるものの、党内では二階幹事長の「人生観」など、「右から左まで各方面の人

 

が集まって自民党は成り立っている」とし、杉田氏の見解を全く問題視しない考え

 

が幅を利かせていることには、危機感を持ちます。昨年秋の衆院選の公約に自民

 

党は「性的志向・性自認に関する広く正しい理解の増進を目的とした議員立法の

 

制定を目指す」と掲げていることに、反していることは明らかです。政権与党と

 

して、ほんとうに多様性を認める社会をめざすのか、目が離せません。