「アメリカ・ファースト」を掲げて、せっかく作ってきた世界の秩序を壊している

 

アメリカのトランプ大統領が、8日、イランの核開発を制限するため2015年に

 

アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ・中国・ロシアの6ヶ国がイランと結んだ核合意

 

からの離脱を表明しました。オバマ政権の政策を転換し、合意で解除されたイラン

 

への制裁を再び発動して「最高レベル」の経済制裁を科すと宣言した、と報じられ

 

ています。トランプ大統領の声明の骨子は、○アメリカはイラン核合意を離脱 ○

 

対イラン政策を再開 ○核合意はひどい、一方的な取引 ○イランの核の脅威に

 

対し、同盟国と共に包括的な解決策を探る というものです。イランについては、

 

2002年に表面化した核兵器開発疑惑で、緊張は危機的水準に達しました。

 

オバマ前政権の下で2015年に結ばれた核合意は、イランと欧米が対話に転じ、

 

共存するための決定だったはずです。同盟国の英仏独などと取り決めた核合意

 

からの離脱には、米政権内でも異論が噴出しましたが、トランプ大統領は国際

 

協調派の高官などを次々に更迭し、強硬派を充て、離脱に布石を打ってきた、と

 

いうことです。英仏独などは、アメリカが核合意から離脱しないよう奔走してきま

 

したが、外交的な挫折を味わうことになってしまいました。アメリカの対イラン

 

制裁再開の方針を受けて、9日の国際原油市場では、原油価格が上昇して

 

います。影響は日本にも及び、イランとの輸出入を再開した商社などの企業が

 

被害を受けると見られます。トランプ大統領は、温暖化防止のパリ協定からも

 

離脱し、再び、一方的に国際協定を否定しました。イランについては、対外融和を

 

掲げるロウハニ政権を追い詰めると、反米強硬派を勢いづけ、かえって核開発の

 

恐れが強まりかねない、といわれています。核合意は、合意によって核兵器保有

 

の可能性が完全に絶たれる保証はないが、対話と圧力で核拡散を抑える第一歩

 

の策として、国際社会の支持を得ていました。エルサレムをイスラエルの首都と

 

認定した際も指摘されていましたが、アメリカの中東政策の方向性が見えず、

 

秋の中間選挙向けに、自分の支持者に向けてのメッセージとしか思えません。

 

アメリカ外交が一貫性を持つよう、英仏独だけでなく、仲良しのはずの日本の

 

安倍首相も力を尽くすべきだと思います。