安倍政権が、放送制度改革で、テレビ、ラジオ番組の政治的公平などを求めた
放送法の条文撤廃に加え、放送局への番組基準作成義務付けなど、NHK関連
以外の放送法の規制をほぼ全廃する方針であることが、22日わかった、と報じ
られています。放送という制度を事実上なくし、インターネット通信の規制と一本化
して、ネット動画配信サービスなどと民法テレビ局を同列に扱い、新規参入を促す
構え、とのこと。そうすると、偏った番組が溢れかえる恐れがあり、懸念されます。
放送法4条は、戦争中の軍部に偏った報道などの反省から生まれた放送法の中
でも、放送の自律を守るための倫理規範とされているものです。その条文は、
放送事業者が国内外で放送する番組の編集について定めていて、①公安及び
善良な風俗を害しないこと ②政治的に公平であること ③報道は事実をまげない
ですること ④意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から
論点を明らかにすること、を求めています。規制改革推進会議が5月ごろに
まとめる答申に方針を盛り込み、早ければ今年秋の臨時国会に関連法案を提出
し、2020年以降の施行をめざす、ということです。放送の内容規制を撤廃すれ
ば、党派性の強い番組、フェイクニュース、差別的なヘイトスピーチなどが氾濫
する恐れがあります。民放は反発すると思われます。放送法4条については、これ
までも、時の政権と放送局との緊張関係が高まるたびにクローズアップされてきた
歴史があります。安倍政権では、政治介入の口実にもしてきていて、放送法4条
は、倫理規範なのに、これに反するとして、NHKとテレビ朝日を呼び付けたことも
あります。そのため、政府のメディア規制の根拠になりうる、という指摘もあり
ました。一方で、本来の放送の役割を守る条文だという思いがあり、私も、そう考え
ます。野田総務大臣も、今月22日に衆院総務委員会で、「4条は非常に重要で、
むしろ多くの国民が今こそ求めているのではないか」と述べています。突如浮上
してきた感のある、放送の政治的公平などの撤廃案を、決して拙速に、数の論理
で進めては、ならないと思います。民主主義の根幹が揺るがされるような事が
相次ぐ政権だけに、とても心配です。