文部科学省は、先日、2022年度の新入生から順次実施する高校学習指導要領
の改定案を公表しました。受け身の暗記から主体的な学びに転換し、18歳を
社会の担い手に育てる、としています。また、「国家や社会の形成者に必要な
資質・能力を育む」として、公民で必修科目「公共」を新設、としています。選挙権
年齢が18歳以上に引き下げられてから、初めての改定となる高校学習指導要領
で、改定案は「主体的・対話的で深い学び」によって、社会で求められている力を
育てることが重要だと強調しています。この方向性は、よいと思います。小中学校
の次期指導要領は、昨年告示されましたが、そこではアクティブ・ラーニングという
言葉が使われていました。それを使わなかったことについて、文科省の担当者は
「カタカナ語でなじみにくく、人によって捉え方も異なるためだ」としていると報じられ
ていますが、連続性からいくと、同じ表現のほうが、わかりやすいのではない
でしょうか。一方で、地理歴史では、近現代の日本史と世界史を統合した「歴史
総合」を設け必修として、固有の領土も明記しました。大学入試改革を踏まえて、
英語は「読む・聞く・話す・書く」の4技能を重視するなど、55科目中27科目が
新設や見直しとなる大幅な再編になっています。主体的に考えられるようにする、
としながら、領土問題では「尖閣諸島は我が国の固有の領土であり、領土問題は
存在しないことを扱うこと」などとなっています。政府の見解を伝えることは大事だ
と思いますが、相手国の主張なども知らせて、生徒が考えられるようにする必要
があるのではないでしょうか。愛国心が、社会化系の科目を中心に、あちこちに
盛り込まれていて、これで「主体的・対話的で深い学び」になるのか疑問です。
また、生徒に主体的・対話的に学ばせるには、教える先生の質を上げることが
必須だと思います。先生方が、主体的・対話的に思考できるように現場がなって
いるのか。自分達ができていないことを教えるわけにはいかないと思います。
現場での環境整備も進めながら、主体的に考えられる生徒を育てられるように
してほしいものです。