アメリカのトランプ大統領は、2日、中期的な核政策の指針である「核戦略見直し」
(NPR)を発表しました。オバマ前大統領が目指した「核なき世界」の理想を事実
上放棄し、非核攻撃への報復にも核を使うことがあり得ると明示しました。また、
核兵器をほんとうに使うと敵国に思わせるため、爆発力を抑えた小型核兵器の
開発も明記しました。これまでオバマ前大統領まで積み重ねてきた、冷戦後から
の米ロの核軍縮の流れに逆行し、リスクが拡大することになり、大きな危惧を
抱きます。戦略の柱のひとつが、新型の小型核弾頭で、潜水艦発射弾道ミサイル
(SLBM)用に、爆発力を抑えた小型核弾頭の開発を進め、実際に使いやすく
する、とのこと。このトランプ大統領の「力による平和」は、北朝鮮が反撃を
すれば、核戦争を招く恐れがあります。使いやすい核を持てば、相手国が怯えて、
抑止力が高まるという考え方は、常軌を逸していると思います。日本政府が、
NPRを「高く評価する」と河野外相の談話を出したことは、「核の傘」を含むアメリカ
に依存していることを改めて明らかにしたことになります。アメリカも加盟している
核不拡散条約(NPT)は、核保有国に核軍縮の義務を課しています。核政策でも
「米国第一」主義のトランプ政権は、核の拡散を防ぐ国際的な体制を崩すことに
なり、大国の責任を放棄しています。昨年は、国連で核兵器禁止条約が採択
され、それに尽力した「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」がノーベル平和賞
を受賞した、核抑止に向けた流れを、唯一の被爆国の日本としては重視して、
アメリカに、もっとものを言うべきだと考えます。