医師の数は31万9480人で、過去最多ということですが、西高東低の状態で
医師の偏在が続いています。人口10万人当たりの医療機関で従事する医師数の
全国平均は240.1人。平均以下となったのは22同県で、大きく下回ったのは
東北と関東に集中している、という厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」
の結果が、報じられています。診療科では、減っていた産科と小児科は増えて
きていますが、外科医は相変わらず減っている、ということです。24時間対応
しなければならない救急、外科、産科、小児科に医師のなり手が減って、診療
報酬を上げるなどしてきた政策が、少しは効果が出ているのかと思います。
一方で、先日も書いたように、ようやく医師の過重労働が注目されるようになって
きています。高度医療を担う全国85の特定機能病院のうち、違法残業や残業代
未払いなどで労働基準監督署による是正勧告を2015年9月以降に受けた施設
が、少なくとも19に上る、とも報じられていました。医師などの過労死や過労自殺
が相次ぐ中、各地の拠点となっている特定機能病院でも医師などが厳しい労働
環境に置かれている実態が浮き彫りになっています。例えば、大阪府の国立
循環器病研究センターでは、時間外労働に関する労使協定(36協定)で、
時間外労働が月300時間まで可能でした。100時間が過労死ラインといわれて
いるのに、ひどいものです。政府は、働き方改革で、残業時間の上限規制導入を
検討していますが、医師は原則診療を拒めない「応召義務」を理由に5年間、適用
猶予としています。この応召義務を見直さないと、医師の人間らしい働き方には
ならず、患者が安心できる医療の質も確保されないと思います。労働組合の
全国医師ユニオン(東京)などが、2017年夏に全国約1800人の勤務医に
行ったアンケートの速報によると、労働時間をタイムカードで管理されていたのは
28%、自己申告が52%。当直明けでも通常勤務を78%がこなし、半日勤務は
16%、勤務なしは6%にとどまった、ということです。医師の労務管理はほとんど
行われていず、国は交代性に必要な医師数を調査するべきだと、指摘されて
います。働き方改革を、医師の特性を踏まえずに適用すると、医療崩壊が起こり
かねず、地域の医療を守るには、医師数の確保、他の医療従事者との役割分担、
せめて、当直勤務明けは午前中だけの勤務にするなど、きめ細かい対応が必要
だと思います。それでも、医師だけが特別で、いつでも診療に応じなければなら
ないから、何時間連続で勤務しても当然とは、とても言えません。せっかくの
政府の働き方改革の号令があるのですから、これまで手がつけられてこなかった
医師の働き方を改善してもらいたいものです。