京都大学は、22日に、ips細胞研究所の山水助教(36)の論文にねつ造と

 

改ざんがあったと発表しました。ips細胞を使って脳の構造体を作ったという論文

 

で、主要な図6点全てに不正があった、と報じられています。山中伸弥所長は、

 

会見で「非常に強い後悔、反省をしている。心よりおわび申し上げる。」と述べて

 

います。ノーベル賞に輝いたips細胞の研究に大きな傷がついた、といわれて

 

います。再生医療の切り札として注目され、国も成長戦略の柱のひとつとして

 

文部科学省が2013~22年の10年間で、京大を中核拠点としたips細胞による

 

再生医療研究に計1100億円の予算を集中的に投下している、ということです。

 

今回の不正で、研究そのものの可能性が否定されたわけではありませんが、日本

 

が世界をリードできる研究で期待を集めているだけに、残念なことです。なぜ、

 

こうした不正が起きてしまうのか、防ぐ手立てはないのか。これまでの理化学

 

研究所の不正などを受けて、文部科学省は、各大学や機関に、データ管理や

 

倫理教育の強化を求め、不正防止策が講じられてきました。ips研究所では、

 

研究者に実験ノートを3ヶ月ごとに提出させるなど、厳しくチェックできる仕組みを

 

設けていたそうです。しかし、それでも防げませんでした。倫理はもちろん大事

 

ですが、それだけでなく、若手研究者の雇用が不安定なことも指摘されています。

 

博士号を得た後、常勤の職についていないポストドクターが1万5千人を超して

 

います。運営費交付金が減らされた国立大学は、任期付きの教員が40歳未満の

 

6割以上にのぼる、とのこと。任期内に成果をあげないと、研究職が続けられなく

 

なるというプレッシャーがあり、今回の助教も、任期付きで、3年余りの雇用期間が

 

あと1年だった、ということも原因と考えられます。ポスドクの問題が指摘されて

 

久しいですが、もっと若手研究者が安心して研究を続けられるような環境整備を

 

しないと、数少ない日本が国際競争で勝てる分野をつぶすことになります。予算の

 

見直しなど、この不幸な事件を契機に、前向きな取り組みをしてほしいと願って

 

います。