選択的夫婦別姓の実現を求めて、東京のソフトウェア開発会社「サイボウズ」の
青野慶久社長(46)など4人が、昨日9日、精神的苦痛等に対する計220万円の
損害賠償を国に求めて東京地裁に提訴しました。戸籍法の規定では、日本人と
外国人の結婚と離婚、日本人同士の離婚の後は、同姓か別姓かを選択できる
のに、日本人同士の結婚で別姓が選べないのは、法の下の平等に反する、と
主張しています。青野氏は、2001年に結婚し、戸籍上は妻の姓を選択しました
が、仕事では旧姓の「青野」を使用しています。パスポートや株主総会で戸籍上
の姓を使うよう強いられ、生活に支障が出たと主張している、ということです。青野
氏は、「旧姓使用に法的根拠を与えてほしい。それだけでたくさんの人たちが救わ
れる」と話しています。これまで女性たちが声をあげてきましたが、男性からの声
は、力になると思います。また、民法ではなく戸籍法に着目している点が、これまで
と異なり、なんとか一歩前進につながるといいと思います。一方、9日付けで就任
した弁護士出身の宮崎裕子氏(66)は、最高裁判事で初めて旧姓を使用する、
と報じられています。女性の最高裁判事は6人目です。宮崎氏は、就任会見で
「弁護士として使ってきた名前を判事としても使い続けるのは当然。価値観は
多様化しており、可能な限り、選択肢を用意することが大切だ」と述べています。
そのとおりだと思います。最高裁は、2015年の判決で、民法の規定を「合憲」と
判断しましたが、全面的に是とはしていません。改姓による不利益をなくす法制度
を作るのは立法府の役割だと指摘しました。しかし、国会は、1996年に法制
審議会で、民法部会長だった父加藤一郎が提起した選択的夫婦別姓制度の
導入を答申しましたが、異例なこととして、自民党の反対で政府案は提出されて
いません。私も議員だった時に、再三野党案を提出し、時々審議までこぎつけたり
しましたが、未だに実現していません。選択肢が豊かなのが、真の豊かな社会だと
確信しています。しかし、右寄りの保守である安倍政権の下では、実現の可能性
は低いのかもしれません。そういう意味でも、もうひとつの選択肢を政治が用意
してほしいものですし、司法の判断が注目されます。