スウェーデン・アカデミーは、昨日5日、2017年のノーベル文学賞を、長崎市

 

生まれのイギリス人小説家カズオ・イシグロ氏(62)に授与する、と発表しま

 

した。日本人出身者の作家としては、1968年の川端康成氏、1994年の大江

 

健三郎氏に次いで3人目で、23年ぶりの受賞となる、と報じられています。

 

イシグロさんは、1954年、長崎市生まれで、現在はロンドン在住です。5歳の

 

時に、海洋学者だった父がイギリスの研究所に招かれ、一家で移住しました。

 

5歳までしか住んでいなかった日本ですが、心の中の美しい思い出と語り、

 

20代半ばになって、頭の中の日本が薄れていくように感じ、小説執筆に駆り

 

立てた、とのこと。最初の長編「遠い山並みの光」と、それに続く「浮世の画家」

 

は、いずれも日本を舞台に選んでいます。イシグロ作品では、「記憶」が一つの

 

キーワード、といわれています。1989年にイギリス文学最高峰の「ブッカー賞」

 

を受賞した代表作「日の名残り」は、老執事の回想を通じて失われる古き良き

 

時代のイギリスを描きました。2005年に、臓器を提供するためにクローン

 

技術で生まれた若者たちの苦悩を描いた「わたしを離さないで」は、映画に

 

なり、日本のドラマでも綾瀬はるかさんが主役で放映され、私も見ました。

 

イシグロさんは、「人々が共有できる感情や感動を伝えることが、私の小説家

 

としての仕事だと思います」と語っています。今回、ノーベル文学賞を決定した

 

スウェーデン・アカデミーは、授与の理由として「偉大な感性を持った小説に

 

よって、世界とつながっているという幻想に潜んだ深淵を明らかにした」と説明

 

し、称賛しました。日本出身のカズオ・イシグロ氏の受賞を、心からお祝い

 

します。書かれた小説を読んでみたいと思っています。書店では、増刷をかける

 

など、大わらわのようですが。