核兵器を非合法化する、核兵器禁止条約が、7日、国連本部で開かれた
条約制定交渉会合で採択されました。核兵器の廃絶を目指し、使用や保有など
を禁止することが、柱になっています。以前にもお伝えしましたが、前文に
「ヒバクシャの受け入れがたい苦しみに留意する」と明記しました。しかし、
米英仏などの核保有国や、アメリカの「核の傘」に頼っている日本や、オランダ
を除く北大西洋条約機構(NATO)の加盟国は、参加していません。オランダ
は、核保有国の事実上の「代理」として意見を述べ、投票で反対し、
シンガポールは棄権しました。投票に参加した124ヶ国のうち122ヶ国が賛成
しました。核兵器禁止条約の骨子は、○核兵器使用による被害者(ヒバクシャ)
の受け入れ難い苦しみに留意。○平和、核軍縮についての教育を普及させる。
○核兵器の開発や実験、製造、保有を禁止。○核兵器の使用や使用するとの
威嚇を禁止。○核兵器の委譲を禁止。○被爆者らの医療、リハビリを支援。
○50ヶ国の批准で発効。と報じられています。50ヶ国批准して90日後に発効
しますが、交渉を主導してきた推進国の当局者は、今年9月の署名開始から、
12~18ヶ月の間に発効すると見ている、と述べ、早ければ来年後半にも発効
する見通しを示しています。この条約は、被爆者の訴えや、各国のNGO関係者
の働きかけなどが、事態を大きく動かした、といわれています。カナダ在住の
被爆者、サーロー節子さん(85歳)の英語のスピーチが、報じられています。
「核兵器はこれまでずっと、道徳に反するものでした。そして今では、法律にも
反するのです。一緒に世界を変えていきましょう。」などと力強く発言し、盛大な
拍手を送られた、ということです。核兵器禁止のために長いこと闘ってきた
被爆者のみなさんは、国内の広島、長崎でも歓迎しています。核兵器禁止に、
世界の3分の2を超える国が賛成して条約が成立した意義は大きいと思い
ます。しかし、当初は、核保有国と非保有国の橋渡しをしたい、と発言していた
広島出身の岸田外務大臣も、アメリカの核の傘の必要性が、北朝鮮のミサイル
発射で高まったことなどからか、発言がなくなり、アメリカからの働きかけもあり
日本が参加しなかったことは残念です。採択の2時間後には、米英仏の国連
大使が連名で、条約をこき下ろし、署名も批准もしないと宣言する声明を発表
し、両者の溝の深さを感じさせられます。進まない核軍縮に不満を募らせた
非核保有国が、保有国や「核の傘」にある日本が信奉する核抑止まで非合法
化したことで、双方の分断が深まっている、と伝えられています。画期的な内容
の条約ですが、核保有国が加盟しないと、実効性はあがりません。世界には、
ロシアが7000、アメリカが6800など多くの核弾頭があります。核軍縮実現の
強い意志と機運を高めるには、世界各国の市民、NGOが連携をして、条約へ
の加盟を促すことだと思います。唯一の被爆国、日本でも、引き続き多くの活動
が必要だと思います。