トランプ政権は、6日夜(日本時間7日午前)、シリアのアサド政権軍が、化学
兵器による空爆を行ったと断定し、対抗措置として化学兵器を保管していると
されるシリア中部のシャイラト空軍基地を巡航ミサイルのトマホークで攻撃しま
した。地中海の米海軍の駆逐艦2隻が、計59発を発射し、基地内に23発が
落ちた、と報じられています。アメリカが、アサド政権への軍事攻撃に踏み切っ
たのは、初めてのことです。シリア国営通信によると、9人が死亡した、という
ことです。アサド政権を支援するロシアは、主権国家に対する侵略だ、と激しく
反発しています。トランプ大統領就任後、関係改善を目指していた米ロ関係に
亀裂が入り、シリアでの内戦が、一層泥沼化する恐れもあります。折しも、
フロリダで中国の習近平国家主席と会談している最中のことで、会談は、
ぎごちないもの、とも伝わってきています。化学兵器を使ったと思われる
攻撃で、子どもたちも含む100人以上が死亡したことは、断じて許せないこと
です。赤ちゃんや子どもたちが苦しんでいる映像は、衝撃的でした。しかし、
事実関係ははっきりしていず、国連など国際的な調査が必要です。そうした
状況の中で、証拠も示さずに軍事攻撃したことは、危険な行為と言わざるを
得ません。これまでアサド氏の退陣にはこだわらない、としてきたトランプ大統
領の態度を一変させた行動に、予測のつかない怖さを感じます。今回の軍事
行動は、踏み切らなかったオバマ前大統領との違いを鮮明にして下がっている
支持率の回復をねらった、また北朝鮮と同盟関係にあるシリアへの攻撃に
よって北朝鮮を牽制した、等のことが言われています。アメリカの国防当局は、
ミサイル攻撃は1回限り、と言っているとのこと。しかし、アメリカの一貫性の
ない外交姿勢に、大きな不安が渦巻いています。シリアでの内戦を泥沼化させ
ないよう、また米ロ関係が険悪なものにならないよう、国連安保理での話し合い
など、国際社会全体で、改善していくことが望まれます。アメリカの今回の軍事
行動について、日本では情報が少ない中、安倍総理は「化学兵器の拡散と
使用は許さないとの米国の決意を支持する」と語りました。武力行使への評価
は避けた、と受け取られていますが、情報が少ない中で、早すぎる決意への
支持ではないでしょうか。ますますシリア情勢や国際関係から目が離せなく
なっています。