東京電力福島第一原発事故の対応費用の総額が、当初の想定の
11兆円のほぼ倍にあたる21.5兆円になるという試算が、経産省
から公表されています。そのうち2.4兆円ほどを、託送料金に上乗せ
して、電気を使うすべての利用者から集める案を月内にまとめる予定、
と報じられています。事故の責任がある東電が全額を賄うはずだった
福島原発の廃炉費用も、一部は消費者が実質的に負担することに
なります。賠償や廃炉作業は、当然進める必要があります。国民に
負担増を求めるなら、わかりやすい議論をし、情報を公開した上で、
理解を求めるべきだと思います。電気料金に賠償日の増加分を転嫁
するのは、国会審議の必要がないから、といわれています。これでは、
適切な増加かどうかが、わかりません。また、原発を持たない新電力に
負担を求めるのも、納得がいきません。大手の送電線を新電力が使用
する際に支払う託送料金に上乗せして、最終的には消費者が負担する、
ことになっています。国が進める電力自由化は、事業者の公正な競争を
通じて、電気料金を安くすることが狙いのはずなのに、これでは、健全な
競争環境を壊すことになります。これは、事故の前に備えておかなかった
「過去分」を事後に集めるという理屈で、閣僚や国会議員からも異論が出て
いる、と報じられています。昨日13日、松本純消費者大臣が、閣議後の
記者会見で「極力慎重であるべきだ。」と述べ、託送料金の役割は、「送配電
に必要な費用(の徴収)に限定すべきだ」と強調した、ということで、そのとおり
だと思います。政府は、事故の後で、原発事故に備え、原発を持つ大手電力
会社が賠償費を「負担金」として、認可法人の原子力損害賠償・廃炉等支援
機構に積み立てる仕組みを作りました。今になって、経産省は「当時の大手
電力の備えは不十分で、電気料金はコストが反映されていない分、安かった」
として、その過去の分を、後から徴収しようとしています。「通常の商取引では、
販売時に原価に含めていなかった分を遡及して取り立てるなどということは
あり得ない」として、自民党議員も入っている超党派の「原発ゼロの会」の
役員会も談話を発表しています。有識者会議で検討しただけではなく、国会も
含めて、広く議論をして、私たちが納得できるやり方をしてもらわないと困ります。