昨日18日、文部科学省は、来年春から主に高校1年生が使用する教科書の


検定結果を公表しました。検定に合格したのは270冊で、政府見解の記述


などを求める新検定基準に基づく検定意見は、日本史教科書に対して5件


あり、内容が変更された、と報じられています。竹島や尖閣諸島を「固有の領土」


と明記した改定学習指導要領解説書に沿って、領土に関する記述が、現在に


比べて約1.6倍に増加しているとのこと。昨年検定結果を公表した中学校


教科書に続いて、高校も政府の見解が色濃く反映されています。例えば、現代


社会の尖閣諸島については、原文が「1970年代に入り、中国や台湾当局が


領有権を主張し始めた。」となっていたものが、修正後は「1970年代に中国や


台湾当局が領有権を主張し始めた。日本は「領土問題は存在しない」としている。」


となっています。主権者教育や、ブラック企業などの社会問題が幅広く、取り上げ


られているのは、よいと思います。しかし、教科書検定の制度は、戦前の国定


教科書が軍国主義に押し流された反省に立って生まれました。著作や編集を


民間に委ねることによって、創意工夫を期待する、ということです。これまでは、


誤りの修正が主だったものが、文部科学省が、自民党の主張をいれて、一昨年


検定基準を改め、近現代史を扱う際に政府見解に基づく記述を尊重することなど


を求めました。そして、教科書策定の指針となる学習指導要領解説書には、尖閣


諸島と竹島を日本の「固有の領土」を明記しています。政府の見解を教えることも


大切ですが、多様な見方を提示して、生徒に考えさせることが必要です。安全保障


政策を大きく変える集団的自衛権容認についても、誤解を与えないように、という


こと等、政府の立場に加えて、取り組みまで積極的に、このように書けば、という


提案があったということで、政府の考え方を書かせる検定ということが、鮮明になった


ということです。やはり、検定は、事実の誤りなど最小限にとどめるべきで、民間


の創意工夫に委ねるということを守ってほしいと思います。多様な教科書があって


こそ、国定教科書を一律に使えというのではなく、現場に選定を委ねる意味が


あるはずです。