原発で事故が起きた時の住民避難のために欠かせない、放射線量計のうち、


半数が性能不足で、必要な放射線量を測れないことがわかった、と報じられて


います。東京電力福島第一原発事故後、国は、原子力災害対策指針を改定


しました。原発から5キロ圏は大事故が起きたら即時に避難し、5~30キロ圏は


まず屋内退避したうえで、モニタリングポストで図った放射線量の値をみて避難


させるかどうかを国が判断することにしました。1時間に20マイクロシーベルトが


1日続いたら1週間以内に、毎時500マイクロシーベルトに達したらすぐに避難


することになっています。そして、指針などで、原発から30キロ圏の市町村に避難


計画の策定を、道府県にポスト設置と、地区ごとに避難の判断基準とするポスト


を定めることを求めています。ところが、運転中の九州電力川内原発周辺に設置


されたモニタリングポストのうち、ほぼ半数が事故時の住民避難の判断に必要な


放射線量を測れないことがわかった、ということです。鹿児島県は、昨年8月の


川内原発1号機の再稼働までに、5~30キロ圏に判断の基準となる48台の


ポストを設置しましたが、このうち22台は毎時80マイクロシーベルトまでしか


測れず、すぐに避難する判断には使えません。鹿児島県の原子力対策課は、


緊急時には近い別のポストで測ったり、持ち込んで据え付ける可搬型ポストを


配備したりするので問題ない、と説明しているそうですが、県が配備した可搬型


ポスト44台のうち30台は100マイクロシーベルトまでしか測れない、ということ


です。また、運転差し止めの仮処分決定で止まった、関西電力高浜原発(福井県)


の周辺は、多くの未設置地点があったこともわかっています。事故が起きた時に


最も重要な住民の避難を判断するためのデータが得られないのに、再稼働させて


いて、住民の安全を、どう考えているのでしょうか。立地自治体が、モニタリングポスト


の設置が不十分なまま、再稼働に同意したことは、拙速すぎると思います。住民避難


の判断を自治体まかせにするのではなく、こうしたポストの設置や実効性のある


避難計画については、国も責任をもってあたるようにすべきだと考えます。拙速な


再稼働の前に、想定外とはもう言えないわけですから、事故は起きることを前提に


安全策に万全を期すことが必要です。