日本銀行は、昨日29日の金融政策決定会合で、金融機関が日銀に預ける
お金の利子をマイナスにする、「マイナス金利」の導入を、初めて決めました。
原油安で世界経済の先行きが不透明になり、年明け以降の市場の混乱で
景気の先行き不安が強まっているため、金利を一段と引き下げることにした
もので、2月16日から適用されます。マイナス金利になると、金融機関は、
日銀に預けるとマイナス金利分、金額が減るため、預けるのをやめて、
積極的に貸し出すを促す効果がある、とされています。黒田総裁になってから
行われてきた、異次元の金融緩和の手法が手詰まりになったため、賭けに
出た、とも見られています。しかし、マイナス金利は、副作用も大きく、これに
よってデフレ脱却を実現できるかは、不透明です。また、経済政策の司令塔
でもあった甘利大臣が辞任した直後の決定は、政権への助け舟という見方が
あるのも、独立性が重視される日銀のあり方としては、気になるところです。
市場の動揺を抑える一時的な防波堤にすぎない、という見方もあります。
政策決定会合でも、9人の委員のうち、賛否が5対4という僅差での決定で
あることも、見方が分かれることを示していると思います。いくら金融機関が
貸し出そうとしても、成長戦略が効果を上げるなど、企業が設備投資などの
ためにお金を借りるには前提が必要です。住宅ローンなどの金利の低下、
輸出企業の業績改善による賃上げなどのメリットがある半面、デメリットとしては、
輸入に頼る小麦粉や大豆を使った食品の値上がりの恐れ、預金金利の低下、
比較的リスクが高い投資商品の勧誘に拍車がかかる等がある、と報じられて
います。また、金融機関の経営が圧迫され、リスクをとりたくないということで、
信用力の低い中小企業などへの融資を抑える可能性も指摘されています。
マイナス金利は、すでにヨーロッパのスイス、デンマーク、スウェーデンなどで
中央銀行が採用している、ということですが、スイスで、小規模な金融機関が
預金にマイナス金利を課すなどの例が見られる、ということです。マイナス金利の
賭けには、不安がつきまとうと思います。