渡り廊下の役割を考える~家のプロポーションを引き立たせる離れの存在~ | 銀杏舞う古民家の宿孫九庵~愛媛県宇和島市築230年超古民家宿経営奮闘記~

銀杏舞う古民家の宿孫九庵~愛媛県宇和島市築230年超古民家宿経営奮闘記~

田んぼの中にある築230年超古民家『太宰家』の離れで、一棟貸しの宿『古民家の宿孫九庵』を運営しています。お客様の一生の思い出となる宿になるよう一人で奮闘しています。

 

こんにちは!ぐりんです。

 

 

 

自然の中にある古民家で暮らし

ている私は、このブログでおススメ

を紹介しておりますが、さすがに

渡り廊下はおススメできないです

が、ご紹介だけさせて下さい。

 

 

 

私が住んでいる古民家の主屋

離れをつないでいる渡り廊下

ご紹介します。

 

 

 

【東側から撮影】

 

 


渡り廊下といえば、どんなところに

設置されているのをイメージしま

すか?

 

 


学校・病院・旅館・行政の庁舎・

神社仏閣・大企業の社屋・駅など

の大規模建築をイメージします

よね?

 



我が家では、居住用住宅であり

ながら、渡り廊下が主屋と離れを

つなぎ、中庭を仕切る形で設置

されています。

 

 

 

おかげで、住宅の床面積がかなり

広いものとなっています。

 

 

 

 

 ―犬伏武彦著 【民家ロマンチック街道―伊予路】引用―

 

 

 

【西側から撮影】

 

 

 

主屋は、江戸時代の末期、文化文政

時代(1804年~1830年に建造され

ものと聞いています。



一方、離れは、昭和3年(1928年)頃

に増築されていますので、100年くら

は、主屋と庭だけの造りでした。



建築デザインの観点で言えば、主屋

だけより、離れと長屋門が増築された

ことで、配置的なプロポーション

よくなり、家の持つ威厳や風格が

備わっているように思えます。

 

 

 

全景写真で見れば、その効果は

絶大です。この地域を治めていた

庄屋の威厳が感じられます。

 

 

 

【池からの遠景写真】

 

 

 

主屋だけでは、建物としてのバランス

が悪いですが、離れがあることで、

ぐっとプロポーションがよくなりました!



周りの借景まで取り込んだ意匠に、

当時の棟梁のデザインセンスの高さ
に脱帽です。



渡り廊下で繋がっているため、雨の

日や風が強い日など天候に関係なく、

主屋と離れの行き来ができるように

なったというわけです。

 

 

 

 

 

上記の画像は、主屋側から見たところ

です。西側に広がる築山に行くため、
外からでも通れるように廊下の床を

張ってない部分があります。渡るとき

には、足を踏み外さないよう注意が

必要です。

 

 

 

 

着物が主流だった時代、足を大股に

開くことができないので、渡し板が

備えつけられています。

 

 

 

 

 

主屋・離れの両側には、開き戸が

あり、中から施錠できる様になって

います。
きちんと防火・防犯
対策が取られて
いるのも感心します。



離れ側の開き戸を開けると、離れの

広縁に繋がっています。渡り廊下と

一帯になって続いているように見え、

とても広がりを感じます。



また、雨が降った場合の対策として、
ガラス戸が備わっています。使われ

ているガラスは、昭和初期の建築

当時のままの状態です。



その当時のガラスは、厚みの違い

によるゆらぎが残っていて、時代を

感じることができ、面白いです。

割れてしまっては、もう同じガラス

を造ることができません。大切に

残しておきたいです。

 

 

 

 

 

 

主屋と離れをつないでいる渡り廊下

の存在が、我が家の魅力を幾重にも

高めてくれているそんな風に思えて

なりません。 



築200年以上の古民家ですが、

空家の期間がなく住み続けている

ため、定期的な手入れや修繕を

行なっており、ひどい傷みも少なく、

維持管理できています。



雨戸を開け放して、通気するだけで、

老朽化にかなりの差が出てきます。

 

 

 

古民家や中古物件にお住まいの

方で、お困りのことがありましたら、

お気軽にお問い合わせ下さい。

 

 

與那原浩建築設計室

 

 

 

【建築ワード説明】


主屋(おもや)
主人とその家族が住む、中心となる

建物のこと

離れ(はなれ)
一定の広さをもった敷地内で、主たる
建物である主屋(おもや)に対し、

従たる建物として、主屋から離れた

場所に存在する建物のこと

文化文政時代(1804年~1830年
江戸幕府 11代将軍 徳川家斉が、

将軍職を家慶に譲りながらも大御所

として、幕府の実権を握っていた

時期で、平穏な期間が続いたため、

町民文化が発達した。

プロポーション
住宅において、建物の大きさや各

部分の間や全体のバランスを指す。

建築において、非常に重要なこと。

意匠(いしょう)
意匠とはデザインのことだが、

建築では建物の間取りや外観の

設計を意味することが多い。

建物や室内の見え方のこと。

築山 (つきやま)
庭園などに、石や土を盛って人工
的に造った小山のこと。