コロナになってからライブが無くなり東京にも行けなくなった。新しい生活様式は、彼に逢う機会をことごとく奪い取っていた。そんなコロナ禍で唯一称賛されるべき様式はリモートや配信ライブの発達だった。
いつも、東京では沢山のライブがあっていたが、地方に住んでいる私みたいな者は頻繁に行けなかったのだが今では配信ライブという形で手軽に観ることができる。そんな中、彼の新しいユニットのライブを配信で観る機会があった。いつでもどんな時でも彼の存在感や雰囲気は変わらないのだけれど、その新しい音楽の世界観が私を新たな世界へといざなってくれたのだ。全ての楽曲が、その世界観がゆらゆらと波間のように寄せては引いていく瞬きの中、そこに何があるのか確かめようと私は水中で必死に目を開けようとする子どもの様にその音に溺れた。脳内がくらくらする程の衝撃と余韻が私を存分に酔わせてくれた。ありふれた日々の雲間に一筋の明るい光が音楽と共に照らしてくれたのだ。初めて彼に出逢った時、こんなにも共感できる音楽があるんだと知った衝撃にも似た感覚。彼だったら私が日々感じる疎外感や孤独を理解してくれるんじゃないかと思ったあの日。その全てが走馬燈の様に思い出された。私はきっと死ぬ前にも同じ感覚を感じこんな映像を観るんだろうな、と思った。そのくらいあなたとの出逢いは運命だと感じていた。その運命という名の試練は私たちに何を期待しているのだろう。私はただ彼に逢いたいだけなのに。そのゴールに向かって私は頭を地面に押し付けられそうになっても踏ん張って歩き続けている。あなたに逢いたくて。