The Wall Street Journal.    

 

――WSJの人気コラム「ハード・オン・ザ・ストリート」

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 原油市場はさらなる悲報に備える必要がある――今度は中国発だ。

 

 ニューヨークの原油先物相場は20日、価格が初めてマイナス圏に沈んだ。背景には、石油需要がなくなる中で、投資家が手放したい期近物に買い手が付かなかったことがある。テキサス州には米国産原油があふれており、少なくとも当面は、行き場を失ったままだ。

 世界最大の原油輸入国である中国では、2月の新型コロナウイルス封じ込めに向けた封鎖措置から、景気が持ち直しつつある兆候が出ている。だが、だからといって、原油価格が切実に必要としている下支えを中国が提供するとは限らない。

 

 中国の石油需要は、1-3月期に崖から転落するように急減したものの、原油輸入は想定外に高水準を維持した。これは、買い手が原油安を好機ととらえ、在庫を積み増したことを示唆している。製油所の生産量は3月に7%近くも落ち込んだにもかかわらず、原油輸入は前年同月比4.5%増えた。

 

 だが、真に痛手となるニュースは、新型コロナの感染が拡大する以前の段階ですでに、中国の製油所が経済が必要とする以上の石油製品を生産していたとみられることだ。つまり、中国政府が戦略的備蓄として原油を安値で買い上げているとしても、中国の全般的な石油需要の伸びはなお低迷する恐れがある。製油所自体がすでに、原油もガソリンなどの完成品も大量に抱えているのだ。

 

 中国は、米国のように石油製品の在庫状況についてタイムリーなデータを公表していない。だが、製油所の生産量や輸入量などの供給データがモノの出荷の伸びといった石油需要を示す指標とどう一致するかを調べることで、在庫の動向を推測することは可能だ。

 

 状況はかんばしくない。全般的な中国の貨物出荷量は、直近のデータである2月に前年同月比28%減少した。コロナ流行で欧米からの需要が大きく低下しているため、貨物出荷量は今後も落ち込みが続くと予想される。中国国内の石油需要をけん引する輸送セクターの回復も極めて弱い。

 

 一方、3月の石油製品の生産量は6.6%減と、比較的緩やかな減少にとどまった。昨年12月の生産量は13.6%増と、2010年以来の高い伸びとなるなど、昨年終盤に記録的な水準となっていたにもかかわらずだ。さらに、石油製品の純輸出は1-3月に41%も増加した。純輸出は、生産量が国内需要を上回ると急増する傾向がある。

 

 これらすべてを勘案すると、原油市場で目下、頼りになるのは程度の差こそあれ、政府という「戦略的」買い手だけのようだ。ドナルド・トランプ米大統領は20日、米政府は足元の原油急落を最大限に活用して、石油備蓄を増やす可能性があるとの考えを示した。石油生産者は中国政府も備蓄の積み増しを続けるよう願った方がよさそうだ。