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「1950年頃、アレクサンドル・ミカさんというパン職人が、フランス南部サントロペでポーランドの祖母に教わったタルト菓子を売り出した。▼55年、映画のロケで訪れた女優ブリジット・バルドーがこれを気に入り、『サントロペの少女』(タルト・トロペジェンヌ)と命名。大評判となって世界に広がった。『お菓子の由来物語』(猫井登さん)にあった。▼このお菓子、昨日の米朝首脳会談と関係がある」と「東京」コラム<筆洗>(6月13日)。

「両首脳らが昼食を取りながら話し合うワーキングランチのデザートに出た。▼ちょっと想像していただきたい。朝鮮戦争以来、長く敵対してきた両国である。最近まで物騒な言葉をぶつけ合っていた、強面の両首脳が同じテーブルにつき、甘く、可愛らしいトロペジェンヌを食べている姿を。▼今回、合意した非核化は成果だが、それ以上に、お菓子を並んで食べる2人を思い浮かべれば緊張の緩和を感じ、首脳会談の意味をかみしめる。平和と呼ぶには早すぎるが、甘いお菓子をほおばりながら喧嘩はできぬと信じる」(筆洗)…。

▼非核化の長い道を歩む2人。お菓子でビートルズの曲が浮かぶ。『世界はバースデーケーキみたいなもの。お一つ、どうぞ。でも(1人で)取りすぎはダメ』(イッツ・オール・トゥー・マッチ)。互いに欲張らず譲り合ってその道を。甘いものでも食べながら」(筆洗)。

<『和平』ムード先行を警戒>…。「米国と北朝鮮が首脳同士の信頼関係を築く歴史的会談となった。緊張緩和は進んだものの北朝鮮の非核化で前進はなかった。評価と批判が相半ばする結果と言えよう。核保有に至った国に核を放棄させるのは、極めて困難な目標である。達成に向け、米国は粘り強い交渉を続けねばならない」と「読売」社説(6月13日)。

<合意は具体性に欠ける>…。「トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長による史上初の米朝首脳会談がシンガポールで行われた。両首脳は共同声明に署名、新たな関係をアピールした。最大の焦点の核問題について、声明は『朝鮮半島の完全な非核化』に取り組むという金委員長の意思の確認に留まった。非核化の時期や具体策は示されていない。米国が求める「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』への道筋は描かれなかった。首脳会談でも<抽象的>な<合意>しか生み出せなかったのは残念だ」(読売)…。

「北朝鮮がこれまでにとった措置は核実験の中止と核実験場の爆破だけだ。金委員長が核を手放す決断を下したかどうかは、不透明だと言わざるを得ない。『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化』の実現には、北朝鮮が核兵器や核物質、関連施設を申告した上で、廃棄や国外搬出を進めることが不可欠だ。国際原子力機関(IAEA)などによる検証・査察体制も整える必要がある。こうした作業をどのような手順で、いつまでに完了させるのか。一連の措置の要領と期限を明記した工程表の作成が欠かせない」(読売)…。

「北朝鮮の弾道ミサイル問題が声明に盛り込まれていないのも不十分だ。金委員長はミサイルのエンジン試験施設の閉鎖に言及したが、全ての弾道ミサイルの廃棄を迫らねばならない。トランプ氏は記者会見で『プロセスの始まり』を強調した。合意を肉付けする作業は、ポンペオ国務長官と北朝鮮高官による今後の交渉に委ねられた。トップ交渉で一気に事態を打開するのには時間が足りなかったのだろう」(読売)…。

「突破力に頼るトランプ外交には不安が残る。北朝鮮との交渉経験を持つ専門家を政権に集め、日本や韓国、中国とも連携して明確な戦略を打ち立てるべきだ――。<圧力の維持が必要だ>…。過去の米朝交渉で、米政権は大統領任期の制約に縛られ、北朝鮮の見返り目当ての揺さぶり戦術に翻弄された経緯がある。政権交代に拘わらず、持続可能な合意を追求してもらいたい。声明には、トランプ氏が北朝鮮に体制の『安全の保証』を与え、米朝両国が『朝鮮半島の永続的な平和体制の構築』に取り組むことなどが明記された。

金委員長が体制の正統性をアピール、国際的孤立から脱する材料に使うのは間違いない。韓国や中国が融和ムードに乗じ、制裁を緩める事態を警戒しなければならない。非核化の進展があるまで制裁を維持する方針をトランプ氏が示したのは当然だ。懸念されるのはトランプ氏が記者会見で米韓軍事演習の中止や在韓米軍の将来の削減に言及したこと」(読売)…。

「米韓と北朝鮮が軍事境界線を挟んで対峙する状況が直ちに変わるわけではない。北朝鮮はソウルに壊滅的な打撃を与えられる火砲を最前線に配備している。この脅威が消えない限り、朝鮮戦争で創設された国連軍や在韓米軍の見直しを議論するのは時期尚早だ。休戦協定に代わる平和体制の構築は、北朝鮮の非核化の完了後に行うとの原則を米国は堅持しなければならない。トランプ氏は、金委員長に日本人拉致問題を提起したことを明らかにした。長年の膠着状態を打破する機会が訪れたと言える」(読売)…。

<日朝会談の環境整備を>…。「安倍首相は米朝共同声明について『北朝鮮を巡る諸懸案の包括的解決に向けた一歩』と支持、拉致問題は『日本の責任において、日朝で交渉しなければならない』と強調した。金委員長との会談を模索するのは当然だろう。拉致被害者の帰国を実現するには日朝両国の首脳が直接、協議するしかない。2002年の日朝平壌宣言は国交正常化後の日本の経済協力実施を明記している」(読売)…。

「核・ミサイルと拉致の包括的解決が国交正常化の前提条件だ。金委員長が前向きの措置をとるのであれば、日本が関係改善を拒む理由はない。政府は米国と緊密に連携、日朝首脳会談の開催に向けた環境の整備を進める必要がある」(読売)…。もって<銘>すべき。
(平成30年6月14日)