横浜からMLB、カブス入りをした今永選手ですが、開幕からの好調が続いています。5月の最終登板では2HR打たれての7失点と乱調をしましたが、それでも5月終了時点で防御率1点台、一時期は、0点台というのは予想していた人はいなかったのではないでしょうか?
圧倒的なパフォーマンスデビューとなった今永投手については、それがゆえに様々なメディアなどからなぜ今永選手が打たれないのかなどといった分析がされています。メディアが分析するぐらいですから、各球団ももちろんそれ以上の分析をしていることでしょう。
分析の結果として挙げられるのは、球速は決して速くないが球の回転率が非常にいいということ、それを、高めのコースに投げることができているということ、左投手としては珍しいスプリットボールを持ち、それとフォーシームの組み立てがうまくいっていること、そして、今永選手があまり身長が高くないことなどが挙げらえれています。
身長が高くないことがなぜメリットになるのかというと、比較的リリース位置が低く、そこから高めに投げられ、回転率や回転軸がよく、ボールの落下が少ないため、より水平性を保ったままボールが投げ込まれるからです。
身長が高ければ高いほど、リリースポイントが高くなりやすいので、高い位置から低い位置に投げ込まれるような投球になります。これは、アッパースイングが主流であるMLBからするとスイング角度とボールの角度を合わせやすいということになります。日本の場合だと、基本的にはレベルスイングなどが主流になりやすいので、反対に角度のある身長のある投手のボールが効果的だったりしますね。
サイドからのボールなどもまた、角度のないボールとなりますが、回転軸が異なり、スライダー気味のボールになったりするので、またボールの軌道というのが異なるというわけです。フィジカルスポーツである野球においてどうしても体も大きい選手が中心的になりがちです。体が大きくリーチが長ければ、その大きさを利用したダイナミックな動きが可能なので、よりボールに力を伝えやすく、それはより速い球速の球を投げやすくなるというわけです。
そして、球速というのは一つ投手の評価ポイントであり、結果身長が高い、フィジカルがあるということそのものが評価の対象になりやすく、結果低身長の選手などはよほどの運動神経おばけなどではない限りドラフトの指名対象になったり、MLBまで昇格するのも難しいかもしれません。
もちろん、アルトゥーベや吉田選手のような例外的に身長の高くない選手というのもいますが、投手ではあまり低身長の投手というのはパッとイメージとして出てこないかもしれません。その意味では今永投手のような投手はMLBではあまり見ないタイプの投手ということになります。
身長があまり高くないからこそ武器になる、この逆説的であるがゆえに、フィットしたというところはあるでしょう。
もちろん、そこには今永選手の投げる哲学者たる事前準備や一回一回の登板で得たものを投球に生かしてきたからというのはあるでしょう。それこそ高めのフォーシームが有効であるということは、バウアー選手などとの交流もあってこそかと思いますが、低めのフォーシームを中心的に投げて開幕投手不調であった山本投手とは対象的であり、そこは意図的なものがあり、準備をしていたからこそということが言えます。
ただ、そもそも、投手と打者の対決においては、投手有利であると言えます。対戦データがない相手に対して、最初から合わせていくというのは野手にとって簡単な話ではないからです。
その上で、事前準備もきちんとしてきた上でという意味で言えば、今永投手のアドバンテージは大きく、見事そのアドバンテージがハマったからこそ、好スタート、素晴らしい形でシーズンを入れたということになります。
逆に言えば、ここからどんどんデータが入ってくる中で、今永投手がどうやってこれからの投球を行なっていくかということになるでしょうか?
また、これから疲労などがたまっていく中でどういう投球ができるのかというのもポイントになりそうです。
今永投手の場合、前述のようにここまで素晴らしい投球ができているのは、そのフォーシームの質というところにあります。
落ちる量が少なく回転軸のいいボールが現在投げられているからこそ、レベルに近いボールとなり、アッパースイングだとポイントが難しいという中で、疲れでボールの回転率などが落ちてくると話が変わってきます。ボールの落ちる量が増えると、その角度という武器が失われ、より当てやすいボールとなるからです。
コンディションをどのようにコントロールしていくのか、というのはその意味では一つ焦点になりそうです。
ボールが落ちてくるようになると、被本塁打なども増えてくる可能性が高くなるからです。
今永投手はそもそもHRを打たれることが多い傾向のある投手でした。狭い球場の横浜を本拠地としていたというのもあるのかもしれませんが、HRをよく打たれるということは、当初懸念材料の一つと言われていました。
レベルスイングが主流であり、かつ、リリースポイントが高くなく、高回転の今永投手のボールは、抑えるときはきちんと抑えれるが、一発当たれば、飛ぶ、いわゆる一発病になりやすいというのがあったのかなと思います。高回転であるというのはそれだけエネルギーを持っているということなので、反発力が高いということを示します。つまり、きちんと当てることができれば飛ぶということになるわけですね。
その意味で言えば、5月の最終登板で、2HRを打たれたましたが、今後は、一発HRを打たれるということはある程度はあるのかなと思います。
ボールの角度が違い、それによってアッパースイングで打ちにくいとしても、当たれば飛ぶからです。その角度にも慣れていくことを想定すると、ある程度HRを打たれるようになっていく可能性というのは十分に考えられます。
投手としてHRを打たれる、増えるというのはやはりダメージが大きいです。そこで、変化をするのか、その変化は場合によっては相手のチームにとって待ち望んだ変化である場合もあります。より打ちやすい投球になってくれればこっちのものだからです。何が武器であり、何を生かしていき、相手をどう苦しめ、相手をどう崩していくか、そのせめぎ合いの中で判断を誤ると、一気に食い物にもされますし、反対により良い判断ができれば、相手を食い物にできます。
その意味では、そう言った中で、では今永投手がどうその状況にフィットしていき、着地点をどこと考えていくのかというところが一つポイントになるかもしれません。
一発HRを打たれることが増えたから、投球スタイルを変えていくのか、自分がMLBで分析されていく中で、それでも結果を出すためにはどうすればいいのか、どういう着地点を考え、プレーしていくのかといった点です。
例えば、シーズンを通してローテを守り、多少HRが増えて防御率が高くなっても、役割を果たすということを一つの目標にするのであれば、HRが多少増えたとしても高めのフォーシームである程度抑えられているのであれば今の投球スタイルをベースとするというのは選択肢の一つになります。
絶えず分析し、分析される中で、どう投球を進化させていくのか、それがなければ、MLBでずっとプレーをするというのは難しいです。それができている投手の一人が、先日日米通算200勝をしたダルビッシュ選手でしょう。
考える投手今永投手、最高の滑り出しとなった今シーズンですが、ここからさらにどうアップデートしていくのか、注目したいですね。