学童野球DH制導入 | 米の心

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全国9000超の学童チームが加盟する全日本軟式野球連盟(全軟連)は、これまで日70球の球数制限や6イニング90分制など選手の心体保護のための様々なルールを採用してきました。そんな中来年度からDH制の導入が決まっているとのことです。

DH制の目的としては、一人でも多くの選手に出場の機会をということのようですが、DH制果たして浸透するのかという点は難しい気がしますね。

もし、これがDH制ではなく、投手も含めた9名プラス打つの専門1名の10名で1巡とするのであれば、あるいは採用するチームもあったかもしれません。しかし、投手の交代に指名打者というのであれば現実的ではないとも言えます

そもそも高校野球などでもそうですが、日本の野球というのは投手を中心にチームを作っていきます。つまり、一番優れた選手が投手になるということを意味しています。大谷選手が二刀流で成功していますが、特にアマチュア野球のレベルにおいてすれば、優れた身体能力のある投手は、チームの4番、中心であるいうことも珍しくありません。よって、投手の代わりにDHというのは考えにくいわけです。

また、DHのような制度を小学生が対象の野球で導入するという点も、選手にとっても好ましい話ではないケースが多いかと思います。

野球で何が楽しいか、それは人それぞれかもしれませんが、やはり打席に立って打ちたいという思いがある人は少なくないのではないでしょうか?小学生の時からすでに、投手専門でOK、守備専門でOKという人は極めて少ないかと思います。

よって、仮に投手がDHになり打席に立てなくなるというのは、その投手の打席に立つ楽しみを奪うということになります。また、もし打席に立たせないことを前提とするのであれば、投手の練習だけをさせればいいともなります。ある意味ではそれはより勝利至上主義的な指揮官の選択につながるということにもなり、よりプロフェッショナルな選択を求めているという話になってしまうわけです。

投手以外の選手にDHをということも可能かもしれませんが、ではお前は2塁の守備だけをしろというのであれば、それはそれでどうなのかという気がします。

また、逆にDHの選手からすればどうでしょうか?打席に立つというのは面白いかもしれませんが、これも指揮官からすれば、究極的にはそれだけをさせるという選択肢にもなり得ます。つまりはバッティングに特化した練習しかさせないともなるリスクがあるわけです。

個人的には、よりエリート教育として特化させるのであれば、選択肢を狭めるというのは悪手であるといえばあながちそうではないと考えています。

ただ、一方で、小学生などの段階からそれだけ可能性を限定し、狭めることがベストであるかというとそうは思いません。様々な可能性を模索していく中で、その選手がやりたいこと、向いていることを見出していけばいいと考えています。

その意味で言えば、DHに特化した選手、投げることに特化した投手というのは、もったいないと感じます。また、そのプロフェッショナルに特化した分業化した野球をして果たして野球を楽しめるのかという点も疑問です。

やはり、野球をするのであれば、守備をして、バッティングをして、走って、それぞれがあっての野球であると思うからです。

DH制というのは確かに出場機会をといえば聞こえがいいですが、果たしてそれを小学生から導入することが野球界としていいかは疑問です。

また、特化した選手の育成は、その後の中高校生の時、プロやMLBを目指すといったときに必ずしもプラスに繋がるとは限りません。守備ができない選手となると、よほど飛び抜けていなければドラフトで日本で指名されるというのは難しいかもしれません。

投打ともに活躍している選手であれば、指名後投手でダメでも野手に転向してということもあり得ます。糸井選手などはまさにそのパターンですね。

プロの球団側からしても、可能性が様々にあるというのはそれだけチーム編成の上で計算しやすい選手とも言えます。もし、何かに特化した選手でそれがダメだった場合もはや戦力外にするしかなくなるわけです。その点、他の選択肢があるというのは選手にとっては2度3度のチャンスがあるということを意味します。

そう考えると、アマチュア野球においてDH制はそもそも基本的には必要ないかと思います。必要とすれば、せいぜい国際大会のようなケースの場合でしょうか?それ以外であれば、積極的にDHを導入した方が却って選手にとってもデメリットが生じる可能性が生まれるということになります。

もちろん、野球を純粋に楽しむために、そしてその楽しむ機会を与えたいというのはわからなくはないですが、そのために誰かから打つ楽しみがなくなっているのであれば意味がありません。

それがゆえにもし導入するのであれば、9人プラス打撃専門の10名でというのであればわからなくはないという話になるわけです。

ただ、結局のところ勝ち負けにこだわらないのであれば、1巡が何人であってもいいかと思いますし、そういう形で草野球などは楽しむというケースは少なくありません。

一方で勝ち負けをとなるのであれば、それぞれのポジションで一番うまい選手を使うのは当たり前ですし、小学生などでいえば特にわざわざ控えの選手を使うシーンは限定的ですし、メリットもないという話になるわけです。

そう考えると、どういう立ち位置で野球を子供たちがするのかという話にもなりますが、どうにせ個人的にはDHの導入はあまりいい一手ではないようにも感じますね。