さて、少し前ですがミュランガイド東京に掲載店の発表がありました。三つ星レストランの数は世界でトップを維持したようです。一方で、ビブグルマンではないお店の掲載なども増えており、個人的にはちょっと行き過ぎな感を覚えます。実際ビブグルマンに掲載されたお店でも味が美味しい美味しくない以前にちょっとサービスなどでぼったくりではないですがやりかたの不親切さを感じるお店なども出てきたりしています。
そもそも円安の関係もあって外国人旅行者なども増えているせいもあるのか、日本の飲食店はバブリーな状態、非常にトレンドとなっている印象が脱ぐえません、それほど美味しいとは思えないお店であっても、予約困難店などになっていたりします。
このあたり予約困難になるかどうかというのは、お店の実力云々より、経営のうまさやマスメディアやSNSマーケティングなどのうまさというところの影響がより強い印象がありますね。もちろん、お店は経営するものですのでそれが間違いとはいいませんが、それが過剰な印象があります。
それは私だけが持っている話ではないようで、先日、知り合いが久々に東京に帰国したら、以前よりお店が悪くなった印象をもったという声を聞いたことがあります。
高級食材を並べればそれだけばパフォーマンスはつきますが、では実際に、その高級食材にどれほどの価値があるのか、そこがバブリーになっているに過ぎないのか、あるいは、その料理人の工夫や技術が十分であるかというのは別の話です。
そもそも生産者の立場で考えてみるとどうでしょう。
それが、農家であっても、漁師であっても、撮れる量というのは限られます。日本は狭い為になおのことそうですね。
つまり、どれほど素晴らしいものがあったとしてもそれを供給するには限りがあるというわけです。
その上、ではその農家、生産者にとって、その供給の配分はどのようにするでしょうか?
もちろん、高いお金で購入するとしたところから順番に供給していくというのも一つの手です。
しかし実際のところは、それまでに飲食店などとの関係性もあり、その関係性を崩してまで、新規のところを優先するメリットがどれほどあるかというと難しいところがあります。
つまりは、どれほど優れた仲介業者や生産者がいたとしても、彼らの中ではすでに優先順位というのは決まっており、それを変えることは原則として難しいというわけです。
もちろん、その中の末席に新しいお店が入るということは、開拓の努力の上でできるかもしれません。しかし、それがすでに長く取引をしている名店を差し置いて優先度でいいものが回ってくるという話になら到底ならないというのが現状です。
最近は、飲食店でもこれはどこのものでという説明をするお店も増えてきました。食べ歩くのが好きな人からすれば、生産者や仲買人にも詳しいので、あそこのものを使っているのか、というのは一つものさしになりますし、それはお店のブランドへの影響を与えます。
ただ、実際のところは、有名なところを使っていたとしても、その末席に加わっているようであれば、そこのもっているもののいいものを本当に仕入れてることができているかというとそうではないということにもなります。
その意味では、老舗のお店、すでにそれだけの関係性をもっているところとの繋がりを覆すのはよほどでなければ無理という話になります。
それでも、豪華な食材や、ブランドがあれば人気になるわけです。お客は来ます。
お客がくるという状況は、経営の目線をでは良好かもしれませんが、料理人としての目は曇らせます。
本当に味に厳しい人は離れていき、その中で味が落ちても、それをもてはやす人ばかりがくるようになるからです。
そして、飲食店で成功した人は、次のステップに入ります。
2号店を立ち上げたり、軽食や甘味処、お土産のデザートや焼き菓子などに手を広げたり、オンラインで販売するようになります。
もはやそれはシェフの手から離れたものですが、人気のシェフというブランドはそこで拍車をかけます。
それが続くとどんどん見えない形で、飲食店の質の低下につながるリスクがそこには孕んでいます。
円安のため外国人旅行客は日本人より財布が緩いかもしれません。そこに合わせた値段設定にするというのは当然考えうる選択肢です。
ただ、ではその円安は?海外からの日本人気がいつまで続くのかというのは別です。
そうした場合、では値段を下げることができるのかというとそれは難しいと言えるでしょう。
飲食店はしばしば、値上げばかりといわれますが、実際値段を下げるというのは簡単ではないと思います。
値段が下がるとなると、質の低下を彷彿させるからです。
それもチェーン店のような大量消費であったり、企業努力の結果のところ、あるいは、そもそも低価格で勝負しているようなところであれば可能かもしれません。
ただ、それ相応の値段を取っているところが値段を下げたらなぜ?という疑問に繋がってしまうわけです。つまり、値段はやすやすと下げるというのはなかなかできるものではなく、下げるには下げる明確な理由が必要となるわけです。
飲食店が値段を上げても、それにより技術や工夫、センスが根本的に変わるわけではありません。そのことは、高級化になったという印象には繋がりますが、訪れた人の満足度が高まったというケースはあまりないように感じます。
そのようなことを踏まえて考えると、飲食店バブル確かに今は感じられるところですが、果たしてそれはどこまで続くのか、お客が飽きた時点で終わりそうな気もしますが、そうなった時に耐えるだけのモノが高級な食材やパフォーマンスでカバーしているお店にあるのか一体疑問ではあります。
また、最近のお店は見た目はシックであったり高級感をだしていたとしても、実際細部をみるとハリボテであったり、サーブの人の確保に苦労している印象もあります。
名店にはサーブでも優れた人がずっとついています。そういう人を引き抜くのは難しいですし、育て上げるというのも難しいわけです。
そのようなことも踏まえて考えると、一体いつまで続くのかとも思ってしまいますね。