本紹介:スポーツ国家アメリカ | 米の心

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今回ご紹介するのは中公新書から出ている鈴木透さん著のスポーツ国家アメリカです。こちら初版が2018年となります。

大谷選手のMLBでの活躍が目覚ましいですが、最近はMLBよりNFLやNBAの方が人気が高い、認知度があるという話も聞きます。世界中でスポーツのマーケットというのはありますが、その中でもマーケットとしての拡大のうまさというのが光るのがアメリカのスポーツですね。アメリカの場合は場合はプロスポーツだけではなく、大学スポーツなどにおける市場、人気の高さというのも凄まじいものがあります。

アメリカの四大スポーツ以外となると世界中でそのマーケットの大きさを感じるものとなれば、やはり移籍金やサラリーも巨額となっているサッカーなどがあるでしょうか?他はボクシングなどの格闘技に四大大会、グランドスラムがあるテニスやゴルフといったところかなと思います。まぁ、テニスやゴルフは賞金が高いというよりは、人気になってスポンサー契約の方の割合が大きい印象もありますが。

MLBは野茂さんやイチローの活躍などもあり、日本人の活躍の歴史となるともう30年近くになるでしょうか。それだけにMLBというのもある程度認知度というのは日本でもあるのかなという印象はありますが、スポーツにはそれぞれどうやって成り立ったかという背景、歴史というものがあります。そして、そういうものというのは外の人からすると意外とわからなかったりしますね。

野球の誕生の歴史という話で言えば、起源がなんだ、クリケットを基にして時間の短縮をしたものなどともいわれたりしますが、アメリカでbaseballという言葉が残っている最も古い文書というのは1791年だそうです。

実はこれは、四大スポーツと言われるものの中では一番古い歴史を持っているスポーツということになります。アメフトだと1874年、バスケットボールの原型が1891年となっています。

今ではアメリカ人の認識の中でも野球は好きな人が見るスポーツの一つのようにされていますが、四大スポーツとしてみると野球が歴史が古く、その分実は権威があるものだったりすることがわかります。実際、アメリカで認知度の高い歌の一つは、私を野球に連れて行ってだそうです。

この本は、そういったアメリカのそれぞれのスポーツがどうやって誕生し、発展して行ったかといったところへアプローチしている本ですね。

その歴史を見ると割と面白く、今の印象とは異なるものなどもあったりします。

例えば、バスケットボールはその始まりは宗教、キリスト教が絡んでいるのだとか。また、野球の歴史には南北戦争の影響があるのだとか、そのあたりは日本人が日本にいる中ではわからないものというのが書かれているのはなかなかに楽しめる点ではないかと思います。

他にも人種問題とスポーツや女性とスポーツ、マーチマッドネスなどが今でも人気の大学スポーツですがアマチュアスポーツとプロスポーツに焦点をあて、その発展の流れといったあたりはかなり興味深いものがあったように思います。

スポーツはそのスタッツなどそういったところばかりに目がいきがちですが、どうやってそのスポーツが根付いたのか、発展したのか、マネタイズしたのかそういったことが好きな人は楽しめる本だと思います。

マイケルジョーダンの映画が話題にもなりましたが、ナイキとジョーダンについても少し触れています。この点は、いい面ばかりではなく、どういう現象が起きたかという点についても記述されていますね。

最後の方になると少し著者の主張が強くなり、そこについては賛否が分かれるところだと思います。

後半にいくに連れてそういう流れになる本というのはこの本だけではなく割と、どの分野でも見られる話ですね。日本の文化なのか、先に結論を述べるのではなく、積み重ねて演繹的に結論に導きたがる傾向があるからなのかもしれません。

導入部分からして荒唐無稽であればその後読み進むということにはなかなかならないでしょうし、読み進むためにはまずは、その背景なりを押さえた上で後半に自分の主張のではないでしょうか。

まぁ、そこについては前半が丁寧に落とし込んでいるにも関わらず、後半は自分の主張につなげたいばかりに、論理的な飛躍が見られるケースなどもあったりするのですが、主張というのは主観であるがゆえに、本人以外にとっては同調する内容には至らないケースというのが出てしまうのは仕方がないかと思いますし、本を読む上でその主張を正しいと思う必要もないかなと思います。

そのあたりそういうものとしてそれはそれとして、どう受け入れるかは勝手であり、ただ一方でそれ以前のアメリカスポーツの話、関わり方というのは興味深いところがある本として、楽しむには十分楽しめる本ではないでしょうか?

スポーツだけではなく、アメリカの歴史やビジネスに興味がある人も読んで楽しい本だと思いますね。