大リーグをサイン盗みが席巻しています。初めに話題になったのはアストロズですがそれに続いて翌年の覇者レッドソックスにもサイン盗みの疑惑がかけられ、監督のコーラは早々にその職を去ることとなりました。
選手でもヤンキースのエースのサバシアなどが怒りを爆発させています。
サイン盗みではありませんが、昨シーズン日本では広島カープのバティスタ選手のドーピング疑惑、陽性反応というのがありました。こちらに関しては、バディスタ選手への処置の甘さや疑惑があったにも関わらず解雇という手段を取らなかった広島に対しての非難の声なども聞こえてきたりします。
まぁいつだったか、巨人が賭博がらみで世間を騒がせた時に、他の選手とは別の寛大な処分を受け、昨シーズンの巨人を中継ぎとして支えた高木選手などもいたりと、結局のところクビにするかどうかは紳士であるかどうかでも、世間がどうみるかでもなく、戦力としてどれほどの評価を選手にしているかにすぎないのかもしれません。
ヤンキースにおいてもAロッドについてはお薬問題があった後も雇用をし続けました。契約がどういう形になっていたかは当時のことですし難しいところもありましたが、Aロッドではなければ、もっと別の処置を考えていた可能性もあるように思えます。
Aロッドやボンズのお薬全盛期というのはそれ自身が禁止されていない時期もありましたし、そういう時代なのでなんとも難しいところがありますが、不正に対しての責任をどう取るかということはもっと考えられるべき話かもしれません。
今回のMLBのサイン盗みの件については、ワールドチャンピオンの資格を剥奪しろなんて声なども聞こえてきたりもします。
確かにそういう観点においても厳しい処置を望む声というのはわからなくはないですが、もっときにするべきはそれによって奪われてしまう人生に対しての責任です。
例えば、サイン盗みによる影響を一番に受けるのは投手です。それをされるだけで防御率が跳ね上がり、投球回数が減ってしまうかもしれません。
そうなると、次の契約更改の時に査定が下がってしまいます。下がるで終わればいい方で、もしかしたら解雇になるかもしれません。
データに基づく評価であれば、サイン盗みによって落とした成績に対して高評価がつけられることはないでしょうから解雇になった後に他のチームへ入るのも難しいかもしれません。選手生命がそれで途切れてしまうわけです。
それはベテランであればなおのことチャンスがないですし、プロスペクトであればそれによってイップスなどを発症してしまうかもしれません。
何かをするということには本来それだけの責任が生じているということです。
フライボール革命によりどうやって打てばHRが打てるということが分析されるようになりました。それによって確かに技術、フィジカル的なアプローチというのは明確になったかもしれません。
しかし野球においてはフィジカルや技術だけではなく精神的な影響がやはり大きいと言えます。
例えば、サイン盗みによってフォークをバカスカ打たれた後に、いつもと同じように同じコースにフォークを投げ切ることができるかといえばそれができる投手はなかなかいません。少しのタイミングのズレが18.44m先では大きなズレとなります。
それを支えるのは肉体や技術だけではなくやはりメンタル、精神の及ぼすところも大きく、イップスなどはその典型なわけですね。
サイン盗み一つとってもそれは実はそれが本来もたらす効果は意外にも限定的なのかもしれません。しかしサイン盗みであっても、それで打率を残すことができれば、HRが増えれば、それまで以上の結果が出ればそれだけ野手は自信を持ってバッターボックスに立つことができます。際どいコースも今まで以上に自信を持って見逃すことができるようになるでしょう。そうすれば精神的に優位に立ちますます結果がついてくるというメンタルへの非常にいいサイクルを生み出します。
投手の場合はサイン盗みをされて打たれたのがきっかけで、なぜ打たれたのかと思い悩み本来の投球がができなくなり、フォームも崩れていくこともあるかもしれません。
正直サイン盗みなどの不正をしていたのがやり玉に挙がっているレッドソックスやアストロズだけかといえばその点については私は疑問に思います。どれくらい黒なのか、グレーなのかという範囲ではどのチームもどの選手ある程度はそういうものに片足を突っ込んでいる可能性は否定できないと考えています。
その意味では、責任の所在をどうするかというのは難しいかもしれません。
ただ、それによって選手生命が絶たれる選手も確実にいるのであるというとこをきちんと認識した上で不正をするのであればするべきであるのかなと個人的には思いますね。