こうやってみると変てこな形の家。これでも二階建てだ。
芝生の黄色いのは夏の日差しのせい。冬は青々としている。
正午頃、玄関にノックの音がした。来客の予定はない。
開けてみると初老の白人のおじさん。脇に何か平たいものを抱えている。
人の良さそうな笑顔で、警戒心を誘う風体には見えない。
お決まりの挨拶を交わし、さて、「何か御用でしょうか?」。
「あのー、実はですね、今年の春ごろ飛行機を飛ばしていたんです。」飛行機?
「ああ、ラジオ・コントロールの奴ですね。」うちの敷地に破片でも落ちたのか?
「いえいえ、そうじゃなくて、本物の飛行機です。小型なんですけど。」ふーん。
「それでですね、上空からいくつか写真を撮ってみたんですよ。」はいはい。
「こちらのお家はお庭の手入れが良くて、目に留まりました。」............。
そんな事はないだろう。うちは草ぼうぼうの荒れ放題だったはずだ。特にこの半年は。
「いいお庭ですね。あなたが手入れしていらっしゃるんですか?」ええ、まあ.....。
「素晴らしい!」。で、思わず声が出た。「選択の余地がないんです。」
そこでおじさんが腕に抱えているものを差し出した。
「どうです!見てください。いい写真でしょう?」そうか、わかった。もう言うな。
「おいくらですか?」.......「80ドルです。」日本円で7000円。かなりのいい値段だ。
「わかりました、頂きます。」
80ドルは私にとっては大金。一週間分の食料が買える。
部屋に戻り、予備のお財布から100ドル札を一枚抜き出して玄関へ。
にこにこしながらポケットから20ドル札を取り出すおじさんと握手までしてしまった。
あいたたた.......。
グーグル・アースで家の全景を見た事はある。
なので、おじさんが撮ったと言う写真との違いはわかる。
そんなもの要らない、となればおじさんの写真は余計なお世話だ。
が、私には欲しい理由があった。しかも実にグッド・タイミング。
必要がなければ10ドルだって払いたくない。
しかし、同じものを個人的に欲しければ、飛行機とカメラマンのチャーターが要る。
千ドルや二千ドルはかかるに違いない。いや、もっとかも知れない。
まあ、それだけ出して注文する人がいるかどうかは別として.....。
そんな訳で、手に入れたのが上の写真。去り際におじさんが、
「今年の3月14日に撮影したものです。額の裏に記録しておくといいですよ。」と。
なるほど、それでわかった。今年の春日本に帰国した直後の写真だ。
それまではじーちゃんが元気に庭の手入れをしていた。
今は.......まずまずというところか。
選択の余地が無い。
