仙人と有機農家 その3 | けこですのブログ

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小雨降る中夢殿へ向かう私達の前を行く僧侶達。
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いつ行くとも行かないとも約束がある訳ではありません。
実際、法隆寺までの電車代はその当時の私には結構痛かった。
それでも、アルバイトの行き帰りに通るなんなんタウンの輸入食品店は覗いて見ました。
すると、あった!ブランド名は何かは知りませんが、ヴァン・ルージュの文字。

「お買い得」の札を添えられて、店頭のバスケットに突っ込んであります。
値段は千円程。40年近く前の話です。フランスワインの話です。
高いか安いかは知りませんが、当時の私の時給は400円あるかなしか。
無理をするほど仙人に友情を感じている訳でもない。次の給料日まで待とう。

給料日が来て財布の中身が一息ついた後、そのワインを買いました。
続けて法隆寺まで足を伸ばしたのでは来月までの予算が心もとない。
結局、仙人を訪ねたのは二ヶ月近く経ってから、だったように思います。
行く前にフランスパンも買いました。おう、お洒落じゃないか!フランス人みたいだぞ。

ワインとフランスパンを抱えて再び法隆寺へ。予算不足でバターは買えなかった。
水汲みが日課だと聞いていたので、以前に訪ねたのと同じ時間に行ってみました。
いた...。「又来ました。」と言うと「上がれ、上がれ。」の大歓迎です。
そして今回仙人ははっきりと宣言したのです。
「この家には電気、水道、ガスは来ていない。」 ......!

画家、というからには作品があるはず。「見るか?」というので見せてもらった。
囲炉裏の部屋の隣の板の間にキャンバスが10数点。多くは無かった。
成るほど、油絵の具の匂いがしなかったはず、パステル画です。
「パステルですね。」「おお、わかるのか。」「はい、私も描きます。」

私がパステル画を描くのは無精者だから。戸外で写生するのに簡単便利。
そして箱の中に並んだパステルの何十、時には何百もの色の配列が好きだから。 
あと、一旦揃えてしまえば後々必要なのはフキサチフ(色止め)だけ、という経済性。
経過時間を気にせず、気が向いた時に手を加えたり、続きを描けるのも便利です。

しかし....。素人の私の目から見ても特になんという事もない絵ばかりでした。
私は絵に関しては頭でっかちだったのです。絵描きになりたいと思った事もあった。
中学の美術の時間に美術担任から、「君は図案家になれる!」と言われ、
自分には才能が無い事を悟った位の頭でっかち。
誰も私に質問した訳ではありませんが、もし芸術とは何か、と聞かれたら、
「非凡な個性と感性が卓越した技術によって表現されたもの」と応えていたでしょう。
仙人の絵は私の目には平凡でした。いうまでも無く、私自身の描く絵も。

パステル、で話が合うと思ったのか、仙人はパステルについて語りだしました。
「あんたはどのパステルを使ってるのかね?」
「ゴンドラのセットにホルベインで色を足して使っています。」どちらも日本製。
「悪くはないがね。やっぱり色に濁りがないのはルフランだ。」 ルフラン?
「フランスのパステルだよ。」 出た!おフランス。

今回は話題がパステル画の方向へ流れてしまいました。
しかし、記憶を辿ると実際にそんな会話をしていたのです。
仙人と私が話しているのを尻目に、助手さんは囲炉裏で何か煮ています。
そういえば今度は美味しいものをご馳走してくれると言っていたな。

前回と同じく、あたりはそろそろ薄暗くなりかけています。
終電は何時だったろう....。


                      又々つづく