うちのじーちゃんは6人兄弟。私にはいとこが7人居る。今となっては付き合いもない。
女いとこの年長から二番目。彼女は年下のいとこたちの人気者。
お手玉、リリアン、蓮華の花の首飾り、何でもできて、年下の私達に教えてくれる。
ところが彼女、いとこ全員の中で一番恵まれない子供時代。
お父さんが飲むと手が付けられない大酒飲み。暴れる、手を上げる、仕事しない。
お米もろくに買えない生活の挙句、離婚、そして新しいお父さん。
弟が二人生まれたが、彼女は肩身が狭い。中学を出ると就職した。
彼女が二十歳すぎ、私ともう一人の仲良しいとこが高校生の時、祖母が死んだ。
(この人はじーちゃんのお母さん。狐煎餅を買ってくれたばーちゃんではない)。
親戚一同集まって、お通夜、お葬式、そして出棺。
彼女がお祖母さんのお棺にすがって大泣きするのを見て私といとこは目を疑った。
死者を悪く言うのもなんだけれど、このお祖母さん性格がおかしかった。
いい時はいい。孫たちに不相応な物も買い与えるし、遊びにも連れて行く。
ところが悪いとなるととめどがない。罵詈雑言、折檻、苛め、日常茶飯事。
孫たちばかりでなく、嫁にも同じ事。うちのかーちゃんも被害者の一人。
とかく揉め事が余りにも多すぎたので、亡くなった時はみな悲しい、というよりは
ほっとしたような気分でいた。だからお棺にすがって泣く彼女の気持ちは解りようがない。
あれから何十年。じーちゃんから彼女の噂を聞いた。
結婚して男の子が生まれたが、不幸な事件があってその子を置いて離婚。
再婚先で又男の子が生まれ、今は中国地方の都市で暮らしていると言う。
うん....今はしっくりと腑に落ちる。彼女は元気でいるはずだ。
恵まれない環境で育つ以外に無かった彼女に、お祖母さんは在り難い存在だった。
その彼女にすらお祖母さんが辛く当たったのも大人の話で聞いていた。
お葬式で彼女が泣いたのは、お祖母さんのいい思い出に涙したのだ。
あの時、そしてその後も、彼女の頭に悪い思い出はすでに無かったに違いない。
過ぎ去った事を悔やんだり恨んだりしてみて何になるだろう。
私のかーちゃんに対するお祖母さんの仕打ちを、私は覚えている。が、恨みは無い。
恨みが消えるまでの年月が私に何ももたらしていない事が今ではよく解る。
彼女はさっさと忘れてしまった。そしていい思い出だけが残った。
私といとこは彼女の事を「頭が悪いのではないか?」とまで思ったのだ。
彼女の人生はその後も平穏ではなかったらしい。
けれど、私には彼女が元気に笑っている姿が見える。
彼女には「忘れる力」がある。
忘れて、前に進むのだ。
