「それ、なんていう曲?」

母が鼻歌で歌いだした曲がイイ感じだったので訊ねた。

「『わたしのノルマンディ』っていう曲よ。

たしかフランス語の教科書にのってたんじゃなかったかしら」

調べてみると19世紀半ばに、故郷ノルマンディに戻る船の上で書かれた曲だった。

船上で春を愛でながら、愛する故郷を想う気持ちがあふれている。

★歌詞

Quand tout renaît à l'espérance, すべてが希望へと生まれかわる時
Et que l'hiver fuit loin de nous, 冬が遠くへ去っていく時
Sous le beau ciel de notre France, 私たちのフランスの美しい空の下
Quand le soleil revient plus doux, 太陽がもっとやさしくなる時
Quand la nature est reverdie,自然が緑を取り戻す時
Quand l'hirondelle est de retour,つばめが戻ってくる時
J'aime à revoir ma Normandie,私はまたノルマンディを見たくなる
C'est le pays qui m'a donné le jour.そこは私に生をあたえてくれた土地

 

※youtubeにリンクします

 

小松良一のフランス語は一年ほど通信教育で学んだ程度で、買い物程度の役にしかたたない。

なので、この歌詞を理解するのも一苦労。

だが、母の小松満貴子は本格的にフランス語を学んでいた。

日本語の認知が衰えても、昔学んでいたフランス語の唄が春に誘われて口に戻ってくる。

 

「修士論文は『フランスの動産抵当』だったのよ。だからだいぶんフランス語の本も読まなくちゃならなかったのよ。」

おお、そこまでフランス語を学んでいたとは、知らなかった。

おそれいりました。

認知機能は衰えても、この母に学ぶことはまだまだ多い。