学生時代に書いた作品:あばら家(1996年) | (仮)月夜に光る 露草の雫(なみだ)

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学生時代に書いた作品である。

作成年月日は不明。


 

 

 

 

 

あばら家

 

 

 

大都会の外れにひっそりと建つ 家が一軒ある

この家が建てられて五十年以上経つのだろうか

所々痛みのはげしい木造住宅

もう この家には誰も住んでいない

戸は傾き 窓ガラスは割れている

屋根は今にも落ちそうな土盛りの瓦

中は薄暗く

ビンや鍋などの雑貨が散乱

歩けば 塵ボコリが待っていましたいうように舞う

釘は錆びつき

柱は虫に喰われている

そして 床はギッシ ギッシと音をならし

上を見上げれば

雨漏りしているような穴が点々とあり

窓は音を立てて隙間風を通す

その風に乗って

裸電球が気持ちよさそうに揺れている

この家の家主たち

クモは

巣を張って堂々と暮らし獲物を狙い

誰にも邪魔されまいと黙々と食べ続ける シロアリ

 

 

夜になれば

電柱の光に集まってくる

虫たちの舞踏会が毎晩のように行われ

この家の大イベントは

ネコたちの集会が

夜中に開かれることぐらいだろうか

また 耳を澄ませば

風の音と新聞紙の舞う音しか聞こえない

 

 

暖かく明るい家族をこの家は包み込んでいた

そして 雨の日も風の日も家は黙っ絶え抜いた

しかし 家族が去ってからの家は

誰も守ることなく

ただ新たな家主と平凡な日々を過ごしている

この家からみて

この月日という時間の流れをどうみているのだろう

 

 

 

 

 

 

 

イラスト:イラストCより

 

 

 

 

作成年月日は不明

 

 

 

実家の前の家をモデルにして書いた。

おじさんが亡くなってから、空き家となり、毎晩のように猫の鳴き声がしていた。