彼女は、魚谷侑未は崖っぷちに立たされていた。
予選3戦全て3着。内容も決して良くはない。
現状10位という数字にも合点がいってしまう、そんな予選道中。
この半荘で浮かなければ、条件を満たすことができなければ、昨年のモンド王座はここで姿を消すことになる。
しかし、しかし。
もし勝利の女神がいるのなら。
俺の願いが1つだけ叶うのなら。
誰よりもまっすぐで熱い視線を持つ女性(ひと)に、どうか微笑んで欲しい。
対局者
二階堂亜樹
宮内こずえ
茅森早香
魚谷侑未
東一局。親は亜樹。
ここで各人の条件を確認しておこう。
予選3戦全て3着。内容も決して良くはない。
現状10位という数字にも合点がいってしまう、そんな予選道中。
この半荘で浮かなければ、条件を満たすことができなければ、昨年のモンド王座はここで姿を消すことになる。
しかし、しかし。
もし勝利の女神がいるのなら。
俺の願いが1つだけ叶うのなら。
誰よりもまっすぐで熱い視線を持つ女性(ひと)に、どうか微笑んで欲しい。
対局者
二階堂亜樹
宮内こずえ
茅森早香
魚谷侑未
東一局。親は亜樹。
ここで各人の条件を確認しておこう。
現在3位の亜樹は結果に関わらず予選通過は決まっている。
ゆーみんと宮内は2着になることが最低条件。しかし互いにトップを取られてしまった場合は2着でも敗退となる。
茅森は45000点持ちトップ条件。
全員に現実的な条件が残った、白熱の最終戦となった。
そして開局。先制は茅森。
魚谷→茅森 3200
チートイリーチをゆーみんから打ち取り、まずは先行する。
東二局。親は宮内。ドラは6p。
宮内がドラドラの好手。ゆーみんは發をポンしてマンズのホンイツへ。
そして先ほど先行した茅森に疑問手。
ここからドラの6pを先打ち。結果は宮内のポンであったが、下家が仕掛けている状況でドラを鳴かせるチャンスを与えるのは和了率を下げている気がする。
まっすぐ行くことが和了率を上げる訳ではないと思うのだが…
さあ、僥倖のドラポンにて満貫テンパイが入った宮内。待ちは36s。
3人テンパイに挟まれた茅森。
ここから選んだのは…ゆーみんの和了牌である1mだった。
チャンタがついて8000の放銃。
手詰まりを起こしていた感もあったが、まっすぐ手を進めていっての打ち込みとなった。
流石にこの手をこの手順で打ってしまっては和了は難しいだろう。
ドラの6p、ゆーみんの2副露。全て自身が提供したものだ。
茅森のミスと感じられるこの局。
だが茅森も歴戦の強者。また猫に例えられる女。
猫は気まぐれ。展開も気まぐれだ。
この5800をゆーみんから打ち取ると次局も宮内から5800を召し取る。
これでトップ目。このブレない心が彼女の強さか。
そして東三局、四局は歴代女流桜花たちが持ち味を魅せる。
リーチツモ一発イーペーコー。2000/4000。
二階堂亜樹は間違えない。正確で丁寧な、誰もがお手本にしたい手筋でしっかりと和了をものにする。
対する宮内も凄い。1枚目の中をポンしたときにはてんでバラバラの牌姿だったが、
マンズと字牌を次々と引き寄せてあっという間の3000/6000。(ドラ南)
他の選手がやったらただの馬鹿ヅキとしか思えない和了。
しかし宮内がやれば「流石だ」と思ってしまうから不思議だ。
東場を終えてトップは亜樹。僅差で宮内、茅森が追う。
一方ゆーみんは1人取り残され、15000点持ちのラス。
一瞬現れたと思った勝利の女神は、またどこかへ消えてしまった。
南一局。親は亜樹。ドラは1p。
いよいよ追い込まれたモンド王座・魚谷侑未。
ここまでずっと良い手が入っているが、なかなか和了に繋げることができない。
今局もタンピン風味の勝負手。ここから何を切るか?
手広いのは6m。4mが3枚見えているのが気がかりだが、マンズが安くテンパイは容易そう。
このルールなら役を無視して目いっぱいに受けても良いだろう。
また三色を見て3mという打ち方もある。現状456の三色は完成していない。
ならば3mを打っておいて高めが入ればカン5m、安め引きの場合でも25mリーチが打てる。
これでもツモって裏1で満貫だ。
しばしの長考。
そして彼女の下した結論は…
どちらでもない、2mだった。
タンヤオ三色に決め打つ打牌。確かに打点は確保されるが、果たしてその受け入れ枚数で間に合うのか!?
この局先制は茅森。
チートイ完成。9s単騎でリーチに行く!
そして同巡!ゆーみんも高め6pを引き入れ追っかけリーチ!
待ちは予定通りカン5m!果たしてどちらが勝つのか!?
さあこれを受けた親の亜樹の手牌はこちら。
共通安牌はなし。
ピンズは2人にほとんど通っておらず、触ることはできない。
打てるとすれば中か5m。
中は字牌。確かに当たる確率は低いが生牌であり、一発目であるため当たった場合三翻から覚悟しなければならない。
一方の5m。5mは茅森に現物。そしてゆーみんの中筋。
シャンポンで当たる可能性もない。どちらがより安全か。
それは火を見るよりも明らかだった。
亜樹からの打ち込みで8000の和了!!
貴重な、本当に貴重な満貫の和了!!
仮に先ほどの場面で3mを打っていたなら、追っかけリーチを打たずに現物を拾いに行っていたなら。
果たしてこの和了はあったであろうか。
その時亜樹がどのような選択をしたか。それは分からない。
だがこの局、ゆーみんが正解を導き出したこと。
それだけは確かな事実だ。
トップ目亜樹からの放銃で4人の点棒は一気に平らに!
南二局は宮内から亜樹への2600の放銃。
南三局を迎え、全員が400点差以内という稀に見る大混戦となっていた!!
南三局。親は茅森。ドラは發。
準決勝進出を巡るこの戦い。
この試合がここまで面白くなったのもひとえに各選手の実力、そしてスター性によるものであろう。
そんなきら星のようなスターたちの戦い。流石だ。全員に手が入る。
ゆーみんは345のタンピン三色。茅森は567の三色、亜樹は中ポンで速攻流せる形。
そんな中、先にテンパイを入れたのは宮内であった。
まさに宮内マジックというべきか。またしてもマンズの鉱脈を引き当て、あっという間のメンホンテンパイ。
待ちはペン7m。だがおそらくポン材が出たら鳴いてトイトイへ持っていくだろう。
そしてゆーみんにもテンパイが入る。
入り目は6s。
平和も、イーペーコーも、三色も消える最安めのツモ。
この日の彼女を象徴するような、具合の悪いツモ。
だがそれでも。
「リーチ!」
彼女は発声する。
安くたって、構わない。
このチャンスを絶対に逃さない。
この36pで、勝負に赴く。
宮内も当然押し返してくる。
無筋の2pも高速でツモ切り。
茅森もテンパイを入れ、追っかけリーチを放ってくる。
誰が勝つかは全く分からない。
もしかしたら勝利の女神なんていないのかもしれない。
いたとしても、おそらく彼女には…ゆーみんには微笑んではいない。
こんなにも辛く、厳しい試練を与えはしない。
だから…この和了は奇跡なんかじゃない、ただの必然。
6pをツモ。裏を1つ載せて2000/4000。
他家を一気に引き離す満貫ツモ。
勝利の女神なんて必要ない。
自分自身の力で、掴み取った6pツモ。
そう、奇跡なんて起こっていないのだ。
もし私たちがこの結果を奇跡と感じるのなら…
それは彼女自身の存在を奇跡と思っているのだ。
これで圧倒的有利にたった魚谷侑未。
オーラスの親で静かに牌を伏せ、準決勝進出を決めた。
1着 魚谷
2着 宮内
3着 亜樹
4着 茅森
文字通り、絶対絶命の状況からよみがえったゆーみんが見事トップを獲得!
本当にこの人は強い。
このシリーズ、ゆーみんにはいつになくミスと迷いがあった。
蒸し返すようであれだが、初戦の4m打ちなどは目を覆うものであった。
俺自身、正直彼女の勝ち上がりを信じられなくなっていた。
口では「絶対大丈夫。信じてるから」とはいうものの、
この放送を迎えるのが本当に怖かった。
だから…今は本当にホッとした気持ちでいっぱいだ。
心から嬉しい。ありがとう。
さあ次は準決勝。
並びにもよるが、トップを取れば決勝戦に残ることができる。
もう恐れることなんてない。
存分に力を発揮してきてほしい。
さあ次は準決勝。
並びにもよるが、トップを取れば決勝戦に残ることができる。
もう恐れることなんてない。
存分に力を発揮してきてほしい。
世界で一番、応援しています。
おしまい
(おまけ)
この日のゆーみんがあまりに無敵だったのでちょっと画像載せておきますね。
ずっと下見てて似たような写真ばっかりだけどw
おしまい
(おまけ)
この日のゆーみんがあまりに無敵だったのでちょっと画像載せておきますね。
ずっと下見てて似たような写真ばっかりだけどw
もっとこの格好すれば良いよ。
準決勝に続く!!!