ある男は絶望していた。
毎日毎日、テレビや新聞で報道される、強盗事件や殺人事件、さらに不条理な通り魔事件など、ニュースは悲しみと憎しみに溢れかえっている事に。
そして、さらに男を苦しめるものは、なんと未解決事件の多いことか。
人を殺し、金品を奪い、何食わぬ顔で、この世界で、なんと、のうのうと暮らしている悪党の多いことか。
しかし、男には、事を起せるほどの地位も、力もありませんでした。
だか、男は、自分が出来る事を、寝る間も惜しんで実行しました。
それは、ありとあらゆる神仏等に祈る事です。
そして、男は、何年も何十年も祈り続けました。
ある日、自分が何年祈り続けたか忘れ始めた頃、男の元に奇跡が訪れたのです。
その日も、いつものように、祈りながら眠りに落ちてしまったようで、ふと気付くと、自分の前に、質素な服を着た老人が立っていました。
男は、声をかけようとしますが、なぜか声が出てきません。
目の前の老人は、そんな事を気にする事なく、淡々と話し始めました。
「お前の祈りの声は、私を揺り動かし,ここまでつれて来た」
「お前の望みを、1つだけ聞いてやろう」
「お前の望む物は何か?」
目の前の老人は、そう問うてきました。
男は、わけが分りませんでしたが、とりあえず返事をしようとしましたが、またしても声は出ませんでした。
しかし、老人は、お構い無しに一方的に話しています。
「うむ、お前の望みは、聞き取った」
「お前の望みをかなえてやろう」
「だが、確認するが、本当にこの望みを実行して良いのだな」
男は、わけが分りませんでしたが、ただ頷くしかありませんでした。
翌朝、目を覚ますと、昨日の事が、うろ覚えながら甦ってきました。
あれは夢だったのか?
ふと、男は、右手に違和感を感じ見てみると、かすかに光っていて、熱を帯びているように、何か、むづかゆく感じました。
その時、男の頭には、昨日の老人の言葉か甦ってきました。
「うむ、お前の望は、聞き取った」
「お前の望みをかなえてやろう」
そして、男は悟りました。
自分が祈り続けた,願いがかなった事を。
今、男は、歩道のの真ん中で、ただ1人、たたずんでいます。
彼が、通ってきた道や、彼の周りには、多くの人が、道の真ん中に横たわっています。
彼の先方には、何が起こったのか理解できずに、ただパニックになっている人々の叫び声がきこえてきます。
何が起こったのか?
男は、自分が願い続けた事が、かなった事を知り、嬉しくてたまりませんでした。
早く試してみたい。 早く人々の不安を取り除きたい。
その思いをだけで胸いっぱいになり、幸福の絶頂で街中へと出かけました。
彼が、祈ったもの、彼が望んだもの、彼が欲した力。
それは、この世界で、犯罪を犯しながら、のうのうと一般人に混じって、生活している奴らを、あぶり出し制裁を加えることの出来る力でした。
彼の右手には、どんな人畜無害な顔をして隠し通しても、心の奥にある悪を暴き、制裁すなわち死を与える力だったのです。
しかし、男には、本当にそんな力があるのか不安もありました。
まず、力を確認するため、彼が向ったのは、駅前で、選挙活動している国会議員の所でした。
この国会議員は、賄賂疑惑等で、黒いうわさの絶えない議員ですが、決して認める事無く、今も、のうのうと議員をつつけている人物です。
そして、街頭で、選挙活動の定番として、握手をしている議員に、男は右手を差し出したのです。
それは、あっという間でした。
議員は、その場に崩れ落ちたのです。
あたりは、一瞬でパニック状態になり、何が起こったのか分らず、ただ、呆然とする人々や、支持者達の怒号飛び交う修羅場と化したのです。
男は、内心ほくそ笑みながらも、無表情を装って、その場を離れようとしましたが、最後に握手した彼に不振を持った者が、叫び声をあげたのです。
人々は、いっせいに男に注目し、詰め掛けようとしてきました。
男は、この場を逃げ切る事を考え、両手を振り回しながらも、とにかく人ごみの中を駆け抜けていきます。
すると、彼の右手に触れた人々が、次々に倒れ始めたのです。
パニックは、さらに拍車がかかり、怒号と叫びと無言の死体が転がる、無法状態に陥りました。
男も、パニックになりながらも、街中へと何とか逃げ切る事に成功しますが、男の逃げ去る道には、右手に触れた人々の死体の道が築かれていったのです。
そして、男は、冷静さを取り戻し気付きました。
男が授かった能力の正体を。
それは、あらゆる悪にたいして、鉄追を下すもの。
どんな悪も、差別なく、大小関わらず、鉄追を下すものだったのです。
男は、絶望した。
男が望んだ力は、こんな能力ではなかったのです。
男の通ってきた道には、子供から,老人まで,様々な人々が横たわっています。
この世界で、生まれてから一度も、嘘1つ尽いた事のない人間など、いるはずもありません。
これでは、本当の悪を炙り出すなど不可能となったのです。
男は、もう一度、神にすがろうと手を合わせたとき、男は、音もなく崩れ落ちました。
この力は、どんな悪も、差別なく、大小関わらず、右手にふれた者に鉄追を下すものだったのです。
そして、今日もまた、人知れず、悪は生き続けるのです。
後書き。
え~小説というか、今朝、ふと思ったものを書いてみました。
初めて、書いたので、文章的におかしい所が一杯と思いますが、大目に見てください。
最後まで、読んでもらえれば幸いです。