小田原征伐というと、豊臣秀吉による天下統一への
最後の関門となった戦いとして名高いです。
最終的な結末としては、孤立無援の中、北条氏は
小田原城で籠城戦を挑んだものの、物量に勝る
豊臣には及ばず、一族の滅亡を招いたということです。
しかし、これは結果を知っている後世の人々の感想
であり、当事者にとってはそれほど単純なことではなかったと
本書は教えてくれます。
実際、関東の覇者である北条氏は、難攻不落の
小田原城を有しており、過去には武田や上杉も撃退しています。
しかも、北条氏は関東一円に無数の支城を持ち、有力な一門を
配していました。このような万全とも思える状況で豊臣を迎え撃ったのが
小田原征伐の実際であり、北条氏の算段としては
長期戦に持ち込み、伊達や佐竹などの反秀吉勢力の決起を待てば
天下の趨勢は引っくり返せるるという思惑もあったのです。
本書は、歴史を結果から振り返るのではなく、同時代人の目線で考える
という視座を与えてくれる、貴重な一冊といえます。