教育は今日、変化することが求められている。
理由は、IT化の進展により単に知識を教え込み
記憶することの価値が低下しつつあるからである。
21世紀において、知識の蓄積はコンピュータが代替してくれる。
このような時代の変化を踏まえて、学校が伸ばすべき「子どもの力」とは
コンピューターが担うことができない「人間独自の能力」であり、
例えば、的確に善悪を判断できる道徳心、他者の話に耳を傾ける力、
異なる文化を尊重する力などである。
このような変化が必要だとして、各国はどのような教育政策を
取るべきか。筆者はPISAの創始者であり、70以上の国や地域で
教育政策の立案と実践に取り組んできた実績から、多くの事例を
本書で取り上げる。とりわけ、特筆すべきは各国の事例をそのまま
紹介するのではなく、エビデンスに基づく分析によりどのようなケースで
どのような政策が適切であるのかを示していることである。
この結果、本書の内容は国や地域の実情に関わらず、再現性の高い
ものとなっている。
本書で特に印象的なのは各事例への分析が客観的なデータに
裏付けられていることである。これは教育現場で顕著であるが、
経験則に従って次に何をすべきか決定されることも少なくなく、
本書のような客観性はあらゆる教育現場に求められる姿勢
であると思う。