人間の能力は二つに大別され、一つはIQに代表される認知スキルであり、

もう一つは忍耐力、協調性、計画力といった非認知スキルである。

 

問題なのはこれらの能力の形成が幼少期になされるために、

小学校入学までどのような家庭環境で過ごしたかによって能力の発達に顕著な格差が

生じることである。

 

例えば、児童虐待やネグレクトといった経験は能力発達を著しく阻害する。

幼少期における親子の親密なふれあいは、脳の発達に多大な影響を及ぼしているのである。

親子の活発なコミュニケーションが子どもの能力を育てるのである。

もし、この能力が不足すると、就学期から成人するまでの過程で犯罪やうつ病や薬物の乱用などの

反社会的事象の温床となってしまう。

 

本書は現状を踏まえて家庭環境に恵まれない子どもを対象として

「就学前プロジェクト」を実施している。この試みが子供の成長を促し、

学中の学業や就学後の勤務状況など多くの肯定的な効果をもたらすことを証明する。

本書は一つの問題提起であり、それと同時に社会的なチャレンジともいえる。