前回も記載しましたが,近年の研究で30-50%1RM程度の低強度レジスタンストレーニングでも疲労困憊まで追い込むことで,高強度レジスタンストレーニングと同等の筋肥大効果が得られるという研究結果が多数報告されています(Mitchell et al. 2012 ,Ogasawara et al. 2013 ,Schoenfeld et al. 2015 ,Schoenfeld et al. 2016 ,Jenkins et al. 2016 ,Morton et al. 2016 ).この話をすると「軽い重さでも筋肥大するなら,負担が少なくていいね」と言う人が居る一方で,「低強度のレジスタンストレーニングで筋肥大するといっても,疲労困憊までやらなきゃならないんでしょ?それだったら,キツさ的には結局高強度と同じじゃん」的なことを言う人がいます.
本当に低強度でも疲労困憊までやるなら,きつさ的には結局高強度の変わらないのでしょうか!?結論から言うと同じではなく,たとえ疲労困憊まで追い込んでも低強度のレジスタンストレーニングの方が負担は少ないことが明らかとなっています.その根拠となるのは下記の論文です.
私が重要だと感じた箇所のみ記載します.
方法
<対象者>
11人の健康な男性(少なくとも過去半年間週2回以上レジスタンストレーニングを継続)
<条件>
以下の3条件をクロスオーバーデザインで実施
LS…低強度・低速度条件(50%1RM,4秒挙げ,4秒下し)
HN…高強度・通常速度条件(80%1RM,1秒挙げ,1秒下し)
LN…低強度・通常速度条件(50%1RM,1秒挙げ,1秒下し)
<トレーニング内容>
チェストプレス→レッグプレス→シーテッドロウ→レッグエクステンションをサーキット形式で3セット,セット間の休息が2分,毎セット疲労困憊まで
<測定項目>
・反復回数,運動時間
・トレーニング直後の主観的運動強度は6から20の15段階のボルグスケールを用いて測定
・トレーニング中の心拍数と心筋酸素消費量(心拍数 x 収縮期血圧) を測定
※この論文のメインデータは運動後過剰酸素消費(Excess Post-exercise Oxygen
Consumption:EPOC)だが,今回の記事には関連のない項目のため割愛
結果※この論文のTableⅡとTableⅢ
・反復回数はHNとLNに比べ,LNで有意に多かった
(1セットあたりの平均反復回数 HN:9.5±0.3回,LN:18.5±0.6回,LS:9.4±0.8回)
・運動時間はHNとLNに比べ,LSが有意に長かった.また,HNに比べLNで有意に長かった
(HN:11.2±0.4分,LN:14.4±0.3分,LS:24.3±0.6)
・トレーニング直後の主観的運動強度はHNがLSとLNに比べ,有意に高かった
(HN:15.8±0.4,LN:14.1±0.5,LS:13.7±0.4)
・トレーニング直後の心拍数はHNがLNとLSに比べ,有意に高かった.また,LNはLSに比べ心拍
数が有意に高くなった(HN:145.4±3.7,LN:139.3±3.6,LS:126.5±4.8)
・心筋酸素消費量はHNとLNがLSに比べ,有意に高かった
(HN:204.6±6.7,LN204.3±6.9,LS:174.0±10.9)
私見
この論文の結果を端的にまとめると,レジスタンストレーニングを疲労困憊まで追い込んだ時の主観的に感じるキツさや心拍数,心筋に掛かる負担は高強度に比べ低強度で低かったということになります.つまり,たとえ疲労困憊まで追い込んだとしても,低強度でのレジスタンストレーニングの方が高強度レジスタンストレーニングに比べ負担が少ないということです.心拍数や心筋酸素消費量でのみ考えると,低強度・低速度のレジスタンストレーニング(いわゆるスロートレーニング)が最も負担が少ないと言えるでしょう.
一方で,低強度だと高強度に比べ時間が掛かるというデメリットが存在します.運動強度と運動時間の間には常に例外なくトレードオフの関係が成立しているので,これは仕方のないことです.そもそも,どんなトレーニング方法にも一長一短が存在します.それを考慮すると,短時間で効率良く筋肥大をさせたい人は高強度,負担を少なく(楽という意味ではない)安全面を重視しながら筋肥大をさせたい人は低強度でのレジスタンストレーニングが良いと言えるかもしれません.
以上,この論文に対する私見でした.
