著者の松尾剛次氏は日本中世史の専門家。
本書は、「葬式仏教」の成立と発展の歴史について、中世仏教史の専門家がわかりやすく解き明かしたものです。
なにかと批判的に使われる「葬式仏教」という言葉ですが、実は仏教が葬式をするというのは決して常識的なことではありません。
日本でも、古代までは「死穢」の問題から、仏教僧が葬式に関わる事はなかったのでした。人々の遺体はは死後河原に捨てられたり、死期が近い病人は屋敷から捨てられたりしていたという事実には驚かされます。
しかし中世、末法思想の広がりは人々に「救われたい」という感情を引き起こします。そのために死後に弔いを受けたいという願いが広まるに至りました。そのような社会的状況をみこし、禅律僧を中心に、「穢れ」の観念を乗り越え、葬送などに携わっていくことになります。
著者は、これを「革命」と論じます。こうして人々は死後の弔い、安穏を得ることが出来たのです。
ほかにも、本書では墓石を建てるようになったのはいつからか、葬式仏教として確立したのはどういう経緯かなどについて論じられています。一つ一つの事実がとても興味深いもので、今後墓などの石造物を見る目が変わりそうです。
自分の死後、葬式も無く遺体も河原に捨てられてしまうことから、死後ちゃんと弔ってもらい、自分の存在を示す墓石まで建ててもらえるようになったのは、中世を通じた「葬式仏教」の発展にあったのですね。
専門的な話もからめながらも、とてもわかりやすい著述となっていますので、ちょっと気になったらぜひ一読をお勧めします。