「郷愁・哀愁の美声」☆三橋美智也⑩ | komageta0123のブログ

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昭和38年。 三橋が昭和30年の「おんな船頭唄」以来毎年続けて来たミリオン・ヒットが遂に途切れる年になりました。

前年12月発表の「流れ星だよ」が好調に推移するなか、早くも1月には新曲として「大番」というテレビドラマの主題歌が発売されます。後に「寅さん」で大人気となった渥美清が初の主演を射止めたドラマでした。

 

「大番」  夢虹ニ 作詞  櫻田誠一 作曲

♫売った買ったの 一と声に

 金が渦巻く 兜町

 今は宿無し とんびでも

 大番一代

 抱いた希いを 誰が知ろ

 

ドラマ人気の上昇に比例して、この曲もじわじわとヒットします。ラジオ番組の「全国歌謡ベストテン」では、橋幸夫の「舞妓はん」と10週以上も首位を争い、ベストテンにも30週にわたって留まり息の長い人気を博しました。

 

6月には、皇太子ご夫妻ご臨席のもと翌年に控えた『東京オリンピック』開催の為に作られた「東京五輪音頭」の発表会が行われ、作曲者・古賀政男をはじめ政財界、放送界、芸能界のお歴々が居並ぶ前で、三橋美智也がこの曲を披露したのです。

 

「東京五輪音頭」   宮田隆 作詞  古賀政男 作曲

♫ハァー

 あの日ローマで ながめた月が

 ソレ トトントネ

 きょうは都の 空照らす

 ア チョイトネ

 四年たったら また会いましょと 

 かたい約束 夢じゃない

 ヨイショコーリャ 夢じゃない

 オリンピックの顔と顔

 ソレトトントトトント 顔と顔

 

この曲は、古賀政男が三橋を想定して作曲したと言われています。しかし当時、レコード会社専属性の壁があり、異例ながら録音権の開放が行われたのでした。

その結果、テイチクの三波春夫、ビクターの橋幸夫、コロムビアの北島三郎と畠山みどり、東芝の坂本九、ポリドールの大木伸夫と司富子にキングの三橋を含めた6者の競作となりました。

 

もちろん三橋が本命視されていたのですが、あにはからんや結果的には、いかにも音頭らしい明るい歌声で歌う三波の勝利となったのです。

三波春夫といえば、戦時中浪曲界で活躍し始めたところで徴兵されて、満州に送られて敗戦を迎えています。そして侵攻してきたソ連軍の捕虜となり、シベリアでの収容・強制労働と4年間の辛い経験をしています。そんな経験を持つ彼ですから、国土を焦土化された我が国が僅か20年足らずでまさかのオリンピック開催が出来る迄に復興した、その喜びも一入だったのではないでしょうか。

また、極寒のシベリアの地で事故や病気、栄養失調などで命を落とした兵士の御霊を背負い、生き残った人間の使命として平和の祭典に相応しい希望の歌を歌うんだという高いモチベーションが人々の心に伝わったんだと思います。

 

その時期三橋の側には重大な問題が生じていました。

実は、昭和37~38年にかけて三橋の声帯に異常が発生して声がかすれたり、音が微妙に外れたりしていたのです。

その為39年前半はやむを得ずスケジュールのうち、キャンセルできるものは全て断り静養に努めました。従って「東京五輪音頭」のキャンペーンにも力を傾けることが出来なかったのです。

 

♢・オリンピック特需で経済に活気 ・ケネディ大統領暗殺 ・黒四ダム完成 ・山岡荘八「徳川家康」が大ベストセラー

 

(この年のヒット曲)

舟木一夫「高校三年生」「修学旅行」「仲間たち」 三田明「美しい十代」 久保浩「霧の中の少女」 梓みちよ「こんにちは赤ちゃん」 坂本九「見上げてごらん夜の星を」 裕次郎・浅丘ルリ子「夕陽の丘」 西田佐知子「エリカの花散るとき」 井沢八郎「男船」 一節太郎「浪曲子守唄」 守屋浩・島倉千代子「星空に両手を」 畠山みどり「出世街道」 三沢あけみ・マヒナ「島のブルース」 美空ひばり「関東春雨傘」 春日八郎「長崎の女」など。