浪花のモーツァルトことキダ・タロー氏が亡くなられたそうだ。
93歳。
歯に衣着せぬ物言いで、いろんなテレビ、ラジオでのトークは面白く聞かせてもらったが、何より印象的で今なお記憶に残っているのは、私g20歳の時の成人式での講演。
ひとつは、下手なアイドル歌手の歌は音楽家としてどうなのか。彼が出した答えは、演奏をする関係者にきちんと礼を尽くしていればOK。天狗になっててはもっての外。
もうひとつは、作曲家は音符ひとつひとつにこだわりを持って作っているので、それをきちんと認識すること。
彼が出した例示の一つが阪神タイガースの応援歌。
♪輝く我が名ぞはんしんタイガース
のはんしんの「はん」は同じ音で歌う人が多いが、実は「ん」は半音低い。
(そこをせっせと言っている割には、「輝く我が名ぞ」のところの譜割りが歌うたびに違ってたのが気になったが)
別の例として、美空ひばりはすごい耳の持ち主で、英語を知らなくても英語の歌が歌えるぐらい完璧にコピーしている。ただ彼女が歌った「若鷲の歌」(♪若い血潮の予科練の〜という歌)で
♪今日も飛ぶ飛ぶ霞ヶ浦にゃ の「飛び飛ぶ」が本来の音符はドレミソソなのだが、彼女はドレミファソと歌っていた(その音源も紹介していた)。
当時は彼女のことを結構ボロクソに言っていたが、しばらくのちに彼女に対する言い方が変わった。おそらく本人と会って、その人物に感銘を受けたのだと思う。
成人式の話なんて退屈というのが印象だが、少なくとも一人はその時の話を数十年ずっと覚えているということを弔いとさせていただきたい。
キダ・タロー氏のご冥福をお祈りいたします。