私の最推し劇団である、あやめ十八番の『六英花 朽葉』を観てきました。

今回は大正ロマン、昭和モダンと銘打ったダブルキャストでの2公演でした。

明治時代に日本に初めてやってきた映画。
当時の映画は活動写真と呼ばれ、映像のみで音が出ないものでした。

海外では字幕をつけ、生演奏で観せていましたが、識字率が低かった日本では、字幕ではなく、ストーリーを説明する弁士(べんし)が誕生しました。

弁士たちの人気は映画スターを凌ぎ、弁士たちは映画館ごとで雇われており、給与も楽士(がくし)と呼ばれた音楽を演奏する人達よりも多かったみたいです。

女性弁士荒川朽葉として生きていた根岸よう子が、どうやって弁士になり、どうして女優になったのかという物語。

ここからはネタバレになりますので、これから観に行く方は観終わってから読んでくださいねてへぺろ

今まさに99年の一生を閉じようとしているよう子の走馬灯。
昔の日本映画は、女役を女性ではなく女形(男性)がやっていました。
元は歌舞伎の女形だったよう子の父は、大部屋でこのまま日の目を見ることがない人生をおくるより、活動写真の女形として活躍することを選びます。

しかし、時代と共に女性役は女優が演じるようになり、よう子の父は職を無くします。
よう子の母は、また女形の時代が来るから息子の実を女形にしようと、歌や踊りなど芸事を習わせます。

そんな時代はもう来ないことをわかっていながら…。

ほとんどの女性は専業主婦であり、働くのはごく一部の女性だけだった時代。
よう子は何かになりたい、でも何になりたいかを見つけられずにいました。

ある日、街に現れた活動写真の女性弁士を観てよう子は、女性でも弁士になれるということを知ります。
そして兄の実も同じく弁士になりたいと思うようになるのでした。

関東大震災の時、男と逃げた母のその後は分からず、数年後、兄妹は緑風館という映画館の人気弁士となります。

2人の人気で毎日お客で溢れる緑風館。
毎夜毎夜仲間と酒盛りをする日々。
しかし、その時代は長くは続きませんでした。
時代は無声映画時代からトーキー(有声)映画時代へと、移り代わっていき、よう子たちの仕事は奪われていくのでした。

お話の舞台は日本、でもセットは洋風にも見えました。
バックにある斜めになっている建物、銀幕に見立てた幕に映されるリリアン・ギッシュの姿。そして、銀幕の奥で繰り広げられる物語の一つ一つは、まさに映画を観ているかのようでした。

何よりも驚いたのが、よう子が弁士になるまでの話を全てよう子役の金子侑加さんの語りで物語が進んでいったことでした。

1人で声も変えて何役も演じてるんですけど‼️何これ、やばっ‼️と思いました。

弁士という仕事は今もあって、うちの近所の映画館では夏休みに子供イベントとして、弁士体験があって、本物の弁士の方に教えて貰って、無声映画に語りをつけるというのをやるんですが、台本あってやることなんです。

だから、この舞台を観てその台本は弁士がそれぞれで書いていたんだなと初めて知りました。

弁士を良く思っていない小説家の老竹孝蔵。
自分の書いた小説が映画になった時、語られる弁士の語りは、自分が書いたセリフでもなく、自分が意図したものと違う事もあったのかということが感じられます。

弁士荒川木蘭となった実。実の友人であり映画監督でもある灰汁惣一郎。
自分が作った映画に弁士が語りを入れることで、映画がより輝いて見えたことから、彼は弁士に好意的でした。
何よりこの時代は無声だった為、役者はセリフを覚える必要もセリフを言う必要も無かった為、脚本自体も簡素的だったのだと思われます。

時代は流れ、日本の識字率も上がってきます。そして何より日本でトーキー映画を作れば、字が読めずとも全ての人が楽しむことが出来てしまうことを灰汁も分かっていたと思います。
そしてそれが彼の友人たちの仕事を奪うことになるということも。

友人たちの為に抗う灰汁ですが、時代の流れに勝てず、トーキー映画を作ることになります。

全ての友人は救えない。
でも少しでも多くの友人を救いたかった彼は、楽士には映画音楽を、弁士の木蘭は脚本家に、朽葉には女優になることを薦めます。
同時に自分が映画女優にした私娼だった苗を見捨てることになります。
なぜなら彼女は耳が聞こえず、話すことも出来なかったからです。
しかも時代は耳の聞こえない人に残酷でした。手話・筆談を禁止し、口語の勉強に励むよう、全国聾唖学校校長会議で、文部大臣より発表されたのでした。

親に見捨てられ娼館に私娼として売られた苗。耳が聞こえないことで客にも怒鳴られ、ここにいても彼女は幸せになれないと女優の道へ誘ったが、その幸せは一生は続かなかった。

無声映画からトーキー映画に変わった時、それまで人気だった役者の何人かが消えたそうです。
声があまりいい声ではなかったり、台詞回しが上手くないが理由だったそうです。
中には苗のように耳が聞こえない人もいたかもしれません。

最近起こった全米俳優組合のストライキは、AI技術の発展により、演技をデータとして半永久的に使用されることによって、俳優という職業をいつかAIに奪われるかもしれないということから起こったそうです。

活動写真の女形や、楽士や弁士がその仕事を失っていったように、俳優という職業もいつかなくなってしまうのでしょうか?

時代の変化で無くなっていった職業はいくつもあり、うちの母は自分の兄がバスの運転手だったことから、バスの車掌さんになりたかったそうです。
当時は女性の車掌さんも多く、バスの中で乗ってきたお客さんから運賃をもらったり、安全チェックする仕事だったそうです。
私が若い頃にイギリスのロンドンや香港に行った時は、まだイギリスや香港ではバスの車掌という仕事は残ってました。
しかし日本では、母が大人になる頃にはその職業は無くなっており、かろうじて残っていたのは路面電車の車掌さんでした。

事務仕事もパソコンの登場や色んなソフトの登場で、どんどん楽になり、何人かでやっていた作業を1人でやるようになりました。

今やってる仕事がこの世から無くなった時、新しい仕事にジョブチェンジ出来る気力…私にはもう無いかもです😭

今回大正ロマン、昭和モダンとありましたが、どっちが好き?と聞かれると私は大正ロマンでした。

役者さんの好き嫌いや良い悪いではなくて、単純に最初に観たのがこっちだったからだと思います。
昭和モダン編で本役をやられる方々が、色んな役で出てたんですけど、その役の1つ1つが凄く印象的で、この人が本役を演じる時、どうなるんだろう?と思いました。

それを1番感じたのが今回あやめ十八番に初めて出演された齋藤陽介さんです。
齋藤さんは前から知ってる役者さんで、あやめ十八番に出てくれないかな?と思っていた役者さんでした。
堀越さんと同い年で面識もあったのですが、堀越さんは知り合いだからという事で誘う方では無い為、今回オーディションを受けての参加となったそうです。

いじめっ子、情夫、助監督、スト扇動者などなど沢山の役を演じてましたが、中でもラストの登場シーンは、昭和モダンへの期待感を一気にアップさせてくれたと思います。

ちなみに今回初めてあやめ十八番の舞台を観に行った娘の1番のお気に入りになった役者さんは、灰汁役の谷戸亮太さん(・ω・ノノ゛☆パチパチ
谷戸さんは本当にどんな役をやってもいい役者さんなんですよね。

娘曰く悪役になりきれない悪役、〇〇の〇〇(アニメの登場人物らしい)みたいに、悪い人かもしれないんだけど、なんか憎めない感じだったそうです。娘はアニメおたくです🤣

私が谷戸さんのファンになった江戸系宵蛍の役もそんな感じだったな…。
 
金子さんは衣装可愛いし、カッコイイし喉強すぎ‼️と言ってました。
堀越さんの書く物語は緻密で奥にはこういう思いがあるんじゃないかと熱く語られ、吉田さんは演奏するだけの人かと思ったら舞台にも飛び出してきて演じるし、ピアノ上手いし、色んな物で音出すし天才か❓と言ってました。

残念だったのはもう1人の劇団員の大森さんが今回出演されてないことで、娘にもこの劇団にはもう1人大森さんという看板女優がいて、絶対娘は好きだと思うと大森さんを初めて観たダズリングデビュタントからの大森さんの女優としての素晴らしさを熱く語ってしまいました。

娘に、もし大森さんが出演するとしたらどの役だったと思う?と聞かれて、やっぱり朽葉かなと思いました。
ゲイシャパラソルの時のように大森さんと金子さんのダブルキャストが理想的だと思いました。

あとでパンフレット読んだら、実際最初はそのつもりだったそうで、やっぱりなと思いつつ、今まであまり再演はしないあやめ十八番だけど、大森さんが女優復帰される日が来たら、大森さんと金子さんのダブルキャストでこの舞台を再演してくれないかな?と思いました。

本当に最高の舞台をありがとうございました‼️

おかわりしますけどね(ΦωΦ)フフフ…