「あたし、死神になろうかしら」
少女が思い付いたように言った。
「あ?思う程、楽な商売じゃねぇぞ」
「だって死神になれば現世に降りれるんでしょ?そうしたら幸彦さんと懐かしい場所に行けるでしょ?」
冬獅郎は、娘が不憫になった。
かつて生きていた頃、冬獅郎は敵襲間近の町で娘の安否を心配して、気も狂わんばかりに探した。娘も戦いの後で累々と積み上がった戦場跡を死に物狂いで冬獅郎を探したそうだ。
件の写真は、この村で撮られたに違いないが心の中で『疑いたくない』
という気持ちがある。
愛しんでいた記憶が色濃いのだ。
だが翌日、冬獅郎を呼び出した阿近の口から告げられたエリアは娘の村の場所だった。
(それだくじゃ決めつけられねぇ)
思い悩む冬獅郎に阿近は言った。
「日番谷隊長。俺は乱菊さんにも世話になってなくないし、何よりあの人が悲しむ姿を見たくねぇんで浮気の片棒は担ぎたくねぇんですよ」
送られて来た最新の写真は女が裾を絡げて冬獅郎に跨っている写真だった。
下半身だけなので女の顔は判らない。
ただ赤い襦袢から白い太腿がなまめかしく写っている。
写真の角度では交わっているのかどうか判らない。
だが、乱菊が見たら気分が悪いのだけは確かだろう。
その頃、乱菊は縁側で柱に寄りかかりながら庭をぼんやりと見ていた。
子供達のため、また騒ぎを大きくしないため周囲の好奇の目を気にしないように何気なく生活しているが
(何だか疲れてしまった)
気持ちが負の方向に向かう。
冬獅郎は、どんなに貞操を汚しても気持ちが他に移ることだけは決してないと誓って来たし乱菊も信じて来た。
だが、冬獅郎の心を占めているのは本当に自分なのかと思う。
『初めて遭った時から惹かれていた』
と、それが愛情の証のように冬獅郎は嘗て言ったが満足に言葉も交わさぬ内に解るものなど外見だけだ。
と…すれば冬獅郎の気を最初に引いたのは己の外見だ。
ならば自分が誰かの代わりという事も有り得るのではないか?
件の娘が現世に在った時の姿は判らないが今は金髪碧眼で乱菊との共通点は少なくない。
ならば自分は娘の形代か。
自分が本物ではないから冬獅郎は、ふらふらと落ち着かないのではないか。
普段なら笑い飛ばしそうな考えを歪んだ土台の上に積み上げて乱菊は溜め息をついた。
その夜も、冬獅郎は戻らなかった。