「冬獅郎さん」
乱菊は見事に育った無駄にでかい体でちんまり居間に座っている夫に声を掛けた。
すると夫は突然に
「乱菊っ俺は別れないぞっ」
ひしと腰に抱きついて来たので
(爆発性のてんかん気質かしら)
と思いながら、やんわりと揺らぐほわほわの銀髪を抱きしめた。余り熱心に抱きしめると変なスイッチが入るので、やんわりとした微妙な力加減が重要だ。
時間は数時前に遡る。
残業を終えた冬獅郎は隊舎を出た所で京楽に捕まった。
既に一杯どころでなく飲んでいた彼は有無を言わさず冬獅郎を八番街三区の行き着けの料亭『橘』に連れて行った。
座敷に通されると京楽は存外に真面目な顔で話始めた。
「日番谷君。これは説教とかじゃなくて乱菊ちゃんの飲み友達の頼みと思って聞いてほしんだ」
「あぁ」
曖昧に頷きながら冬獅郎は不思議そうに京楽を見た。
「僕は女性は労るべきだと思っている」
「あぁ」
京楽は実にそれを実践しているし、自分とて京楽ほどではないまでも女性を無碍にしたり蔑視してはいない。
何せ男の隊長で副官に女性を置いているのは京楽と自分だけだ。
「それと同時に女性の面目を潰すべきではないとも考えている」
冬獅郎は一瞬、最近行った女性席官の大量降格の件かと考えた。
しかし、あれには確たる理由があり他隊の京楽が口を挟む事ではない。
だが、京楽という男はそこら辺はわきまえており親しい間柄でも口出しする人間ではない。
「その顔だと思い当たらないようだね。僕が言っているのは乱菊ちゃんの事だからね」
「あっ?俺が乱菊の面目を潰しているってのか?」
「そりゃ、自分の旦那様が他の女性の所に足繁く通って、それを隠しもしないんだからね」
「はぁ?女って、俺は村長と復旧計画を相談しているだけだぞ。それに、あそこの娘は十四の小娘だぞ」
「君が乱菊ちゃんに想いを寄せたのだって、ほんの少年の頃だよね。それに問題は君のつもりじゃなくて周囲がどう見るかだよ」
「つまり、乱菊も周囲に躍らされて俺を疑っているわけか?で、あんたに泣きついたと」
「まさか、乱菊ちゃんだけは君を仕事熱心だと感心しているよ。ただ、周囲が乱菊ちゃんを『夫に打ち捨てられた気の毒な女』扱いしたがっているのさ。まぁ、乱菊ちゃんが毅然としているんで成功していないけどね。ただ、乱菊ちゃんは忍耐力があるから張り詰めるだけ張り詰めて、ぷつりと切れないかと」
「切れたら、どうなるよ?」
「三つ指ついて『別れてください』とか」
京楽と別れた冬獅郎は一目散に帰宅し今にいたる。
「いきなりどうしたんですか?」
「何か『俺が女のとこに通ってる』とかの与田話が流れてるのか?俺は無実だからな」
「分かっていますよ。あなたは仕事の打ち合わせにいらしているだけですもの」
「信じてくれるか」
「勿論です。でも、万が一浮気したら」
「浮気したら?」
「秘密です」
こいつは不味いと思う。再度、離縁なぞしたら今度こそどちらかの葬式まで会っても貰えなさそうだ。
「あの娘は、そのなんだ現世での知り合いなんだ」
「冬獅郎さんは現世での事を覚えているんですね。分かります。それなら懐かしくて話も弾みますね。あたしが冬獅郎さんの立場でも同じだと思います」
「駄目だぞ乱菊。例え現世の知り合いでも特定の男と親しくなるのは許さん」
「あら、でも『ただの知り合い』でしょ」
「そうだ。だがな、俺は了見が狭いんだ。俺の知らない事を誰かと仲良く語らうなんざ我慢できねぇ。俺は、きっと暴れる」
「あら、あたしは信用ないんですね」
「それだけ惚れてんだ」
「「ただいま」」
硝子工房に植木鉢を作りに行っていた子供達が帰って来たので乱菊は冬獅郎を置いて厨に向かった。
○
成長と共に了見が狭くなるたいちょ。
冬『すっかり見栄を張るのをやめたからな(高笑い)』
竜『男に見栄や体裁は必要だと思うぜ俺は』
虎『後、意地もな。母子家庭はもう嫌だよ。面倒で』
冬『面倒?』
子供達『お母さんに言い寄る男が多くてさ』
冬(阿近に言って貞操帯を)
子供達(お父さんが悪い顔してる)
乱菊は見事に育った無駄にでかい体でちんまり居間に座っている夫に声を掛けた。
すると夫は突然に
「乱菊っ俺は別れないぞっ」
ひしと腰に抱きついて来たので
(爆発性のてんかん気質かしら)
と思いながら、やんわりと揺らぐほわほわの銀髪を抱きしめた。余り熱心に抱きしめると変なスイッチが入るので、やんわりとした微妙な力加減が重要だ。
時間は数時前に遡る。
残業を終えた冬獅郎は隊舎を出た所で京楽に捕まった。
既に一杯どころでなく飲んでいた彼は有無を言わさず冬獅郎を八番街三区の行き着けの料亭『橘』に連れて行った。
座敷に通されると京楽は存外に真面目な顔で話始めた。
「日番谷君。これは説教とかじゃなくて乱菊ちゃんの飲み友達の頼みと思って聞いてほしんだ」
「あぁ」
曖昧に頷きながら冬獅郎は不思議そうに京楽を見た。
「僕は女性は労るべきだと思っている」
「あぁ」
京楽は実にそれを実践しているし、自分とて京楽ほどではないまでも女性を無碍にしたり蔑視してはいない。
何せ男の隊長で副官に女性を置いているのは京楽と自分だけだ。
「それと同時に女性の面目を潰すべきではないとも考えている」
冬獅郎は一瞬、最近行った女性席官の大量降格の件かと考えた。
しかし、あれには確たる理由があり他隊の京楽が口を挟む事ではない。
だが、京楽という男はそこら辺はわきまえており親しい間柄でも口出しする人間ではない。
「その顔だと思い当たらないようだね。僕が言っているのは乱菊ちゃんの事だからね」
「あっ?俺が乱菊の面目を潰しているってのか?」
「そりゃ、自分の旦那様が他の女性の所に足繁く通って、それを隠しもしないんだからね」
「はぁ?女って、俺は村長と復旧計画を相談しているだけだぞ。それに、あそこの娘は十四の小娘だぞ」
「君が乱菊ちゃんに想いを寄せたのだって、ほんの少年の頃だよね。それに問題は君のつもりじゃなくて周囲がどう見るかだよ」
「つまり、乱菊も周囲に躍らされて俺を疑っているわけか?で、あんたに泣きついたと」
「まさか、乱菊ちゃんだけは君を仕事熱心だと感心しているよ。ただ、周囲が乱菊ちゃんを『夫に打ち捨てられた気の毒な女』扱いしたがっているのさ。まぁ、乱菊ちゃんが毅然としているんで成功していないけどね。ただ、乱菊ちゃんは忍耐力があるから張り詰めるだけ張り詰めて、ぷつりと切れないかと」
「切れたら、どうなるよ?」
「三つ指ついて『別れてください』とか」
京楽と別れた冬獅郎は一目散に帰宅し今にいたる。
「いきなりどうしたんですか?」
「何か『俺が女のとこに通ってる』とかの与田話が流れてるのか?俺は無実だからな」
「分かっていますよ。あなたは仕事の打ち合わせにいらしているだけですもの」
「信じてくれるか」
「勿論です。でも、万が一浮気したら」
「浮気したら?」
「秘密です」
こいつは不味いと思う。再度、離縁なぞしたら今度こそどちらかの葬式まで会っても貰えなさそうだ。
「あの娘は、そのなんだ現世での知り合いなんだ」
「冬獅郎さんは現世での事を覚えているんですね。分かります。それなら懐かしくて話も弾みますね。あたしが冬獅郎さんの立場でも同じだと思います」
「駄目だぞ乱菊。例え現世の知り合いでも特定の男と親しくなるのは許さん」
「あら、でも『ただの知り合い』でしょ」
「そうだ。だがな、俺は了見が狭いんだ。俺の知らない事を誰かと仲良く語らうなんざ我慢できねぇ。俺は、きっと暴れる」
「あら、あたしは信用ないんですね」
「それだけ惚れてんだ」
「「ただいま」」
硝子工房に植木鉢を作りに行っていた子供達が帰って来たので乱菊は冬獅郎を置いて厨に向かった。
○
成長と共に了見が狭くなるたいちょ。
冬『すっかり見栄を張るのをやめたからな(高笑い)』
竜『男に見栄や体裁は必要だと思うぜ俺は』
虎『後、意地もな。母子家庭はもう嫌だよ。面倒で』
冬『面倒?』
子供達『お母さんに言い寄る男が多くてさ』
冬(阿近に言って貞操帯を)
子供達(お父さんが悪い顔してる)