姫君達を向かい入れた以上は、いかに気が進まなくとも共に夜を過ごさねばならない。世継ぎを残す事も大切な責務の一つである。しかしながら、他の女人を抱いてしまうと、僅かに己が身に感ぜられる乱菊姫の気配が消えてしまいそうで、お気の進まれない東宮でいらした。
それでも初めての相手ではない気安さから式部卿の姫、名を雪姫と仰られるが、の元にまずは通われた。
その後に桃姫の元へいらしたのだけれど、二人の姫君と夜を過ごされた東宮は桃姫に違和感を覚えずにはいられなかった。
雪姫も乱菊姫も個人差はあっても初めての夜には東宮を受け入れるのに多少ならぬ苦痛を感じておられた。未通のそこには東宮の侵入を阻む壁があった。
東宮は桃姫と情を交わすにも同じく苦労するだろうと考えておられたが、実際には呆気ないほど簡単に東宮を受け入れ、あまつさえ二夜目には明らかに愉悦を覚えているようなので、姫の貞操に疑問を覚えられたのだ。
案外、姫には思う相手が既に居て内々に通って来ていたのかもしれない。
それが此度の政治的な処遇により是非もなく入内させられたのかもしれない。
「哀れな事だ」
誰にともなく東宮は呟かれ、乱菊姫のご様子を確かめるための、ご使者をお立てになるためご自身が住まわれる梨壷へと戻っていかれた。結局、他の方々を憐れと思われる事はできても愛しく思われるのは宇治においでの方だけなのだった。