「綺麗」
言ったとたんに子供の様に駆け出した 。
「冷たくない雪みたいですねぇ。本当の無香の花ですね」
光をはじく白い花びらを手の平で受けとめ楽しそうに乱菊が笑う。
その様子をスマホで撮しながら、
『春の女神』の様だと冬獅朗は思う。
この写真を基に馴染みの絵師に描かせようかと思案しかけてすでに決めた。
写真は記録としては優れているが味気ない。
既に乱菊の絵は何幅も描かせており冬獅朗は、ちょっとしたコレクターだ。
その時、一際強い風が吹いた。
舞い上がった花びらが二人を隔たせる。
「あなた。落ち着いて」
素早く移動して背後から強くだきしめている冬獅朗の腕をやさしく擦って乱菊は冬獅朗に向き合った。
妙に強ばった面持ちの冬獅朗に微笑みかけ
「子供を十人以上産んで、すっかり貫禄着きましたもの風や花びらなんかに拐われません」
冬獅朗は少し強張りを解いたが力力一杯乱菊を抱き締めた。
「あたしはあなたを不安にさせてますか?」
手を伸ばして強ばった頬を撫でる。
「違ぇ。お前ぇがどうとかじゃなくて俺が情けねぇんだ」
「あたしだって再婚は怖かったんですよ?」
「あ?何が?」
「初めての時は別れの辛さや苦しさを知らなかった。だから離れられた。でも、あの苦しさを知った今は二度と味わいたくないもの。だからね、再び手を取って、あの苦しさを味わうくらいなら、曖昧な関係のままの方がいいかしらって」
「お前…」
「だからね。手を再び取った以上は簡単に離れてやりませんからね」
乱菊は華やかに笑った。
「お前…マジでいい女な」
冬獅朗は感極まって強く抱き締めた。
この夫婦は直ぐにキュンとして感極まる。
「新婚どころか恋人同士みたいだね」
京楽はしみじみ言いながら
(出産ラッシュが止まらないのも仕方ないね。乱菊ちゃん、これから何人産まされるんだろね)
「そろそろ、例の村へ行きますか?」
意外とクールな嫁様の問いかけでキュンキュンタイム終了のお知らせだ。
「いや、予約しといた宿屋へ向かう。この状態じゃ、話なんぞできねぇ」
冬獅朗の視線を追うと不自然に膨らんだはかまが見えた。
「手か口でしましょうか?」
「花びらの中で真っ昼間外てのはそそるるが、どうせならお前ぇの中に出してぇ」
「そうですねぇ…他人が来るかもですしねぇ」
「ほれ、宿に行くぞ。落ち着かねぇ」
バカップルは腕を組んで瞬歩というそら恐ろしい フォームで異動した。能力の無駄遣い…有効活用法だ。
部屋へ通されると、冬獅朗はさっさと着ているものを脱ぎ捨て部屋付の露天風呂に入った。乱菊は習い性で着物を衣紋掛けに片付けていると
「おい」
と、切羽詰まった声がした。
(お風呂でして大丈夫かしら?直ぐにのぼせるのに)
数刻後、単なる欲の吐き出しで終らなかった冬獅朗は、座布団をまくらに自作氷で頭を冷しながら恋女房に扇いでもらい夕飯までを過ごすことになった。
それでも夕飯前には復活し、再び乱菊をおしたおしたところで
「お夕飯です」
の声に慌てて居住まいを正した。
上座下座に別れる間がなかったので、仲良く横に並んで笑みを返す。
中居は夫婦の見目の良さに一瞬顔をまじまじと見てしまい手早く料理を並べた。
「さあ、まずは一献」
乱菊は、そそくさと酒を薦める。
何せ風呂では完全に夫が満足していないのが解っているので酔って早々に眠ってほしいのだ。
冬獅朗は酒に強く宴会で酔い潰れることはないが乱菊と二人きりだと一定量で眠気が来るらしい。
その後、甘え倒すのでめんどうくさいが背に腹は変えられない。
「美味しそうな山菜ですねぇ。はい、あなた」
乱菊は天ぷらを一つ摘まんで冬獅朗の口に持っていく。
「すっげぇ、分厚い椎茸だな」
「ですねぇ。山菜も美味しいわ」
「魚や肉より草が好きって安上がりな奥さんだわな」
「水路も大切だけれど、先に葡萄好きのモンスター倒しますか?あなたの事だから住み処は推測できているのでしょう?ねっ?」
「あぁ」
答えながら小首を傾げた嫁は可愛いと思う。
未だにつやつやの頬は酒で少し上気している。
「奴が現れた方向と爆破地点との同心円状にお誂え向きの山に穴ぐらがある。共鳴現象で崩れたんだろ」
「冬獅朗さんて何気に物理や数学に明るいですよね」
「物理って判るだけ
立派だぜ」
「昔、教えてくださったでしょ?」
「お前ぇ、よく覚えてるな」
遥か昔、まだ少年の頃に食事しながら冬獅朗は読んだ本の知識を話して聞かせていた。
内容を復唱するのは知識の定着に良いし歳上の女の知らない事を教えるのは気分が良かった。
この地域は一見、盆地のようだが、周囲の山々はカルスト火山の外輪山で、中央にあるべき火口は既に活動を終えており、代わりに外輪山の南部に新しい火口ができており冬獅朗の予想ではその辺りにモンスターの巣窟があると計算していた。
◆
もう、二百年近く昔の事だ。
当時、商家を中心に凶行を重ねていた盗賊のアジトを探り当てて捕縛に向かった時だった。
首領は最後の道連れに隠していた火薬に火を放ち冬獅朗達を爆死させようとした。
結界で部下を護ったは良いが山が形が変わる程に崩れてしまった。
そこに冬獅郎の霊圧はなく捜索の甲斐もなく着物切れ端すら見付けられなかった。
結果から言って冬獅郎は生きていた。アジトになっていた洞窟は厚い岸壁一枚で他の洞窟に繋がっており、遠く離れた流魂街の村に繋がっていて冬獅郎は村人に救出されていたのだ。ただ、記憶を失っており同時に霊圧もとじられてしまっていたのだ。(詳細は『風の行方』参照)
半年あまりの探索を経て冬獅郎の死亡は、ほぼ確定された。
隊長を守れなかった副隊長として乱菊は周囲に責められた。
まぁ、それも昔のことだ。
その時に乱菊は思った。
生きてさえいてくれれば、同じ空の下に存在してくれれば側に居られなても良い。他の誰を思っていても良い。
それが、妻となり、何人もの子を為し幸せに暮らしている。夢のようだ。と。
◆
溶岩が固まった斜面は固く足の裏が痛くなりそうだった。
しかし、二人の瞬歩は速く半ば宙を浮くようだったので大禍なく怪しげに口を開けた洞窟にたどり着いた。
周辺をおぞましい化物がうろうろしていた。
「きっしょいですねぇ」
「お前、虚を見慣れてるくせにストレートだな」
「虚は禍々しいですけど、あれは生理的に気持ち悪いですねぇ」
「違いねぇ。いつぞや現世で一緒に見たエイリアンみてぇだからな」
「あぁ、それそれエイリアンそっくりですねぇ」
「お前ぇ、ヒロインに感情移入しすぎて、すげぇ熱心に見てたよな」
「カッコよかったですもん」
「あぁ、そうだな」
他にバイオハザードなどもエラく感情移入していたなぁと思う。
美女と野獣はなんでだか、野獣に感情移入してた。そう、彼の妻は囚われのお姫様よりも助けに行く騎士に感情移入する。
とっくに諦めたわいと突進しそうな妻の襟首を掴んで笑った。
息子達に
(何で今、笑ってるんだろ?)
と、不審がられる類いの笑みだ。
「あれ、再生すっから灰猫で切り刻むな。やるなら凍らせてからだ」
「はい」
乱菊が一歩下がると冬獅郎は遠慮なく全てを凍らせた。
冬獅郎は勿論、乱菊も寒さに顔色一つ変えない。
「いつの間にか寒さ耐性付きました。隊士達もかしら」
(なもん、お前ぇだけに決まってんだろ)
絶対零度に凍った敵を、にこやかに切り刻んでいる女を見て思う。
前総隊長の流刃若火でも溶けない氷を始解で切り刻む女。
ある意味怖い、決して戦いたくない。凍らせても動きそうだ。
何でも切り刻みで済んでしまうので、未だに乱菊の卍解を見た者は少ない。
超音波で存在そのモノを、消し飛ばす技は多方向攻撃ではないので使い勝手が良かろう。
さすが、霊王の爪の元所有者だ。
それを藍染に奪われなければ、この女は違う者になっていたのだろうか。市丸ギンは取り戻そうとしていたようだが、そんな訳の解らないものいらんと思う。
凍らせて切り刻む料理の様な技で露払いが済んだので二人はさっさと洞窟に入る。
【戦闘シーンは次に続く】
既に消化試合な話ですが、水路作り村の人と約束しましたもん。
息子達に『お父さんが私財なげうって流魂街救済始めたらどうしよ』と、囁かれている。
言ったとたんに子供の様に駆け出した 。
「冷たくない雪みたいですねぇ。本当の無香の花ですね」
光をはじく白い花びらを手の平で受けとめ楽しそうに乱菊が笑う。
その様子をスマホで撮しながら、
『春の女神』の様だと冬獅朗は思う。
この写真を基に馴染みの絵師に描かせようかと思案しかけてすでに決めた。
写真は記録としては優れているが味気ない。
既に乱菊の絵は何幅も描かせており冬獅朗は、ちょっとしたコレクターだ。
その時、一際強い風が吹いた。
舞い上がった花びらが二人を隔たせる。
「あなた。落ち着いて」
素早く移動して背後から強くだきしめている冬獅朗の腕をやさしく擦って乱菊は冬獅朗に向き合った。
妙に強ばった面持ちの冬獅朗に微笑みかけ
「子供を十人以上産んで、すっかり貫禄着きましたもの風や花びらなんかに拐われません」
冬獅朗は少し強張りを解いたが力力一杯乱菊を抱き締めた。
「あたしはあなたを不安にさせてますか?」
手を伸ばして強ばった頬を撫でる。
「違ぇ。お前ぇがどうとかじゃなくて俺が情けねぇんだ」
「あたしだって再婚は怖かったんですよ?」
「あ?何が?」
「初めての時は別れの辛さや苦しさを知らなかった。だから離れられた。でも、あの苦しさを知った今は二度と味わいたくないもの。だからね、再び手を取って、あの苦しさを味わうくらいなら、曖昧な関係のままの方がいいかしらって」
「お前…」
「だからね。手を再び取った以上は簡単に離れてやりませんからね」
乱菊は華やかに笑った。
「お前…マジでいい女な」
冬獅朗は感極まって強く抱き締めた。
この夫婦は直ぐにキュンとして感極まる。
「新婚どころか恋人同士みたいだね」
京楽はしみじみ言いながら
(出産ラッシュが止まらないのも仕方ないね。乱菊ちゃん、これから何人産まされるんだろね)
「そろそろ、例の村へ行きますか?」
意外とクールな嫁様の問いかけでキュンキュンタイム終了のお知らせだ。
「いや、予約しといた宿屋へ向かう。この状態じゃ、話なんぞできねぇ」
冬獅朗の視線を追うと不自然に膨らんだはかまが見えた。
「手か口でしましょうか?」
「花びらの中で真っ昼間外てのはそそるるが、どうせならお前ぇの中に出してぇ」
「そうですねぇ…他人が来るかもですしねぇ」
「ほれ、宿に行くぞ。落ち着かねぇ」
バカップルは腕を組んで瞬歩というそら恐ろしい フォームで異動した。能力の無駄遣い…有効活用法だ。
部屋へ通されると、冬獅朗はさっさと着ているものを脱ぎ捨て部屋付の露天風呂に入った。乱菊は習い性で着物を衣紋掛けに片付けていると
「おい」
と、切羽詰まった声がした。
(お風呂でして大丈夫かしら?直ぐにのぼせるのに)
数刻後、単なる欲の吐き出しで終らなかった冬獅朗は、座布団をまくらに自作氷で頭を冷しながら恋女房に扇いでもらい夕飯までを過ごすことになった。
それでも夕飯前には復活し、再び乱菊をおしたおしたところで
「お夕飯です」
の声に慌てて居住まいを正した。
上座下座に別れる間がなかったので、仲良く横に並んで笑みを返す。
中居は夫婦の見目の良さに一瞬顔をまじまじと見てしまい手早く料理を並べた。
「さあ、まずは一献」
乱菊は、そそくさと酒を薦める。
何せ風呂では完全に夫が満足していないのが解っているので酔って早々に眠ってほしいのだ。
冬獅朗は酒に強く宴会で酔い潰れることはないが乱菊と二人きりだと一定量で眠気が来るらしい。
その後、甘え倒すのでめんどうくさいが背に腹は変えられない。
「美味しそうな山菜ですねぇ。はい、あなた」
乱菊は天ぷらを一つ摘まんで冬獅朗の口に持っていく。
「すっげぇ、分厚い椎茸だな」
「ですねぇ。山菜も美味しいわ」
「魚や肉より草が好きって安上がりな奥さんだわな」
「水路も大切だけれど、先に葡萄好きのモンスター倒しますか?あなたの事だから住み処は推測できているのでしょう?ねっ?」
「あぁ」
答えながら小首を傾げた嫁は可愛いと思う。
未だにつやつやの頬は酒で少し上気している。
「奴が現れた方向と爆破地点との同心円状にお誂え向きの山に穴ぐらがある。共鳴現象で崩れたんだろ」
「冬獅朗さんて何気に物理や数学に明るいですよね」
「物理って判るだけ
立派だぜ」
「昔、教えてくださったでしょ?」
「お前ぇ、よく覚えてるな」
遥か昔、まだ少年の頃に食事しながら冬獅朗は読んだ本の知識を話して聞かせていた。
内容を復唱するのは知識の定着に良いし歳上の女の知らない事を教えるのは気分が良かった。
この地域は一見、盆地のようだが、周囲の山々はカルスト火山の外輪山で、中央にあるべき火口は既に活動を終えており、代わりに外輪山の南部に新しい火口ができており冬獅朗の予想ではその辺りにモンスターの巣窟があると計算していた。
◆
もう、二百年近く昔の事だ。
当時、商家を中心に凶行を重ねていた盗賊のアジトを探り当てて捕縛に向かった時だった。
首領は最後の道連れに隠していた火薬に火を放ち冬獅朗達を爆死させようとした。
結界で部下を護ったは良いが山が形が変わる程に崩れてしまった。
そこに冬獅郎の霊圧はなく捜索の甲斐もなく着物切れ端すら見付けられなかった。
結果から言って冬獅郎は生きていた。アジトになっていた洞窟は厚い岸壁一枚で他の洞窟に繋がっており、遠く離れた流魂街の村に繋がっていて冬獅郎は村人に救出されていたのだ。ただ、記憶を失っており同時に霊圧もとじられてしまっていたのだ。(詳細は『風の行方』参照)
半年あまりの探索を経て冬獅郎の死亡は、ほぼ確定された。
隊長を守れなかった副隊長として乱菊は周囲に責められた。
まぁ、それも昔のことだ。
その時に乱菊は思った。
生きてさえいてくれれば、同じ空の下に存在してくれれば側に居られなても良い。他の誰を思っていても良い。
それが、妻となり、何人もの子を為し幸せに暮らしている。夢のようだ。と。
◆
溶岩が固まった斜面は固く足の裏が痛くなりそうだった。
しかし、二人の瞬歩は速く半ば宙を浮くようだったので大禍なく怪しげに口を開けた洞窟にたどり着いた。
周辺をおぞましい化物がうろうろしていた。
「きっしょいですねぇ」
「お前、虚を見慣れてるくせにストレートだな」
「虚は禍々しいですけど、あれは生理的に気持ち悪いですねぇ」
「違いねぇ。いつぞや現世で一緒に見たエイリアンみてぇだからな」
「あぁ、それそれエイリアンそっくりですねぇ」
「お前ぇ、ヒロインに感情移入しすぎて、すげぇ熱心に見てたよな」
「カッコよかったですもん」
「あぁ、そうだな」
他にバイオハザードなどもエラく感情移入していたなぁと思う。
美女と野獣はなんでだか、野獣に感情移入してた。そう、彼の妻は囚われのお姫様よりも助けに行く騎士に感情移入する。
とっくに諦めたわいと突進しそうな妻の襟首を掴んで笑った。
息子達に
(何で今、笑ってるんだろ?)
と、不審がられる類いの笑みだ。
「あれ、再生すっから灰猫で切り刻むな。やるなら凍らせてからだ」
「はい」
乱菊が一歩下がると冬獅郎は遠慮なく全てを凍らせた。
冬獅郎は勿論、乱菊も寒さに顔色一つ変えない。
「いつの間にか寒さ耐性付きました。隊士達もかしら」
(なもん、お前ぇだけに決まってんだろ)
絶対零度に凍った敵を、にこやかに切り刻んでいる女を見て思う。
前総隊長の流刃若火でも溶けない氷を始解で切り刻む女。
ある意味怖い、決して戦いたくない。凍らせても動きそうだ。
何でも切り刻みで済んでしまうので、未だに乱菊の卍解を見た者は少ない。
超音波で存在そのモノを、消し飛ばす技は多方向攻撃ではないので使い勝手が良かろう。
さすが、霊王の爪の元所有者だ。
それを藍染に奪われなければ、この女は違う者になっていたのだろうか。市丸ギンは取り戻そうとしていたようだが、そんな訳の解らないものいらんと思う。
凍らせて切り刻む料理の様な技で露払いが済んだので二人はさっさと洞窟に入る。
【戦闘シーンは次に続く】
既に消化試合な話ですが、水路作り村の人と約束しましたもん。
息子達に『お父さんが私財なげうって流魂街救済始めたらどうしよ』と、囁かれている。