これらの文章は他人に教えるためのものではなく,私が書くことで確認し記憶に定着させ,
他人に私はここまでは分かっている(誤解している)ことを示すためのものです.
小学校の教室内で児童が所持していた教科書などが窃盗された場合
を考えて,文科省がどう指導しているのか,いろいろ調べてみました.
とりあえず犯人が同級生である場合を想定します.
[1]
文科省・いじめの問題に対する施策
の次のサイトは参考になる.
学校において生じる可能性がある犯罪行為等について
では,
1.警察への通報・相談に係る基本的な考え方
(1) 学校や教育委員会においていじめる児童生徒に対して必要な教育上の指導を行っているにもかかわらず、その指導により十分な効果を上げることが困難である場合において、その生徒の行為が犯罪行為として取り扱われるべきと認められるときは、被害児童生徒を徹底して守り通すという観点から、学校においてはためらうことなく早期に警察に相談し、警察と連携した対応を取ることが重要。
(2) いじめられている児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるような場合には、直ちに警察に通報することが必要。
とし,
2.学校において生じる可能性がある犯罪行為等
としては
金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする。 | 窃盗 | 第235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。 事例:教科書等の所持品を盗む。 |
器物損壊等 | 第261条 前3条に規定するもの(公用文書等毀棄、私用文書等毀棄、建造物等損壊及び同致死傷)のほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。 事例:自転車を故意に破損させる。 |
https://www.mext.go.jp/content/20230220-mxt_jidou01-000024699-201-1.pdf
生徒指導提要(2022年12月)文部科学省
で,窃盗を検索すると
p96
p113
p157
p178
の4か所がでてきます.
このうち,p113は窃盗の防止の話で,
3.7.3 学校と関係機関との連携・協働
(2) 学校と警察・司法
法務少年支援センターが,窃盗防止のワークブックを持っている
というだけです.
p157では
6.2.2 低年齢から繰り返される非行
このような不良行為などが繰り返されると、次第に常習的な窃盗のほか、粗暴な非行
(器物破損、暴力行為、傷害、恐喝など)や性的に逸脱する非行(援助交際のような売春
行為など)、薬物に依存する非行などの本格的非行に発展するケースも見られます。
p178では
7.4 児童虐待の発見
特に、生徒指導上の課題としてしばしば見られる児童虐待の影響には、小学校低学年か
らの窃盗や激しい暴力、家出、いじめの加害の繰り返し、薬物などへの依存、自傷行為や
摂食障害、自殺企図などがあります。また、それらの症状は思春期に増悪しやすく、加え
て何度指導や治療をしても改善が難しいのも特徴です。
とあり,小学校での常習的な窃盗が深刻であると書いてあります.
4つのうち最も重要なのはp96で
第 3 章 チーム学校による生徒指導体制
3.5 危機管理体制
3.5.1 学校危機とは
学校では、けんか、いじめ、窃盗、暴力行為、授業中や課外活動中のけが、実験や実習
中の火災といったものから、学校全体に混乱をもたらす食中毒、感染症、放火や殺傷事件、
また地域全体の危機である自然災害などが発生することがあります。事件・事故や災害な
どによって、通常の課題解決方法では解決することが困難で、学校の運営機能に支障をき
たす事態を「学校危機」と呼びます。
つまり,窃盗予防については別として,すでに窃盗が起こってしまった場合は,
文科省の生徒指導提要としては,学校危機と定義され,通常の課題解決方法では解決が困難とされます.
教科書がなくなれば授業という学校の運営機能に支障がきたします.
これについてはチーム学校による生徒指導体制が重要とされています.
[3]
いじめ問題に対する施策
という上のサイトで,
(1)-(6)のうち,
(1),(3)は防止
(2)は定義
(5)は自殺
(6)は不登校
で,すでに窃盗が起こってしまったので,(1),(3)は該当せず,(5),(6)は後回しにして,
(2)と(4)を考える.
(2)いじめの定義
虐めの定義
「いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍してい
る等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な
影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該
行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こ
った場所は学校の内外を問わない。
「いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察
に相談することが重要なものや、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生
じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。これらについて
は、教育的な配慮や被害者の意向への配慮のうえで、早期に警察に相談・通報の上、
警察と連携した対応を取ることが必要である。
いじめとは、何か
ふざけや遊びをよそおったり、インターネット上やメールなど、大人の目に付きにくい場所や形で行われます。いじめられた子供自身も、「心配されたくない」「仕返しが怖い」という気持ちから、いじめを否定する心理が働く場合もあります。
(中略)
いじめは必ず起こりうるもの、という認識のもと、ささいな兆候にも積極的に認知し、対処していく姿勢が必要です
・「 こ ん な 事 案 ま で い じ め と 数 え た ら 一 体 何 件 ま で ふ く れ あ が る の か 」・「 一 回 き り だ か ら い じ め と し て 認 知 す る の は い か が な も の か 」
と い っ た 声 を 聞 く こ と が よ く あ り ま す 。
(中略)
し か し 過 去 の い じ め 事 案 を見 る と 、 い じ め は ほ ん の 些 細 な こ と ( こ ん な 事 案 ま で ・ ・ 、 一 回 き り だ か ら ・ ・ ) か ら 予 期 せぬ 方 向 に 推 移 し 、 自 殺 等 の 重 大 な 事 態 に 至 る こ と も あ る の が 現 実 で す 。 そ の た め 、 初 期 段 階 のい じ め で あ っ て も 、 あ る い は 一 回 限 り の い じ め で あ っ て も 、 学 校 が 組 織 と し て 把 握 し ( い じ めの 認 知 )、 見 守 り 、 必 要 に 応 じ て 指 導 し 、 解 決 に つ な げ る こ と が 重 要 で す 。
(中略)
い じ め の 定 義 に は 、
① 行 為 を し た 者 ( A ) も 行 為 の 対 象 と な っ た 者 ( B ) も 児 童 生 徒 で あ る こ と
② A と B の 間 に 一 定 の 人 的 関 係 が 存 在 す る こ と
③ A が B に 対 し て 心 理 的 又 は 物 理 的 な 影 響 を 与 え る 行 為 を し た こ と
④ 当 該 行 為 の 対 象 と な っ た B が 心 身 の 苦 痛 を 感 じ て い る こ と
と い う 4 つ の 要 素 し か 含 ま れ て い ま せ ん 。 か つ て の い じ め の 定 義 に は 「 自 分 よ り も 弱 い 者 に 対 し て
一 方 的 に 」、「 継 続 的 に 」、「 深 刻 な 苦 痛 」 と の 要 素 が 含 ま れ て い ま し た が 、 法 律 上 の 定 義 に そ れ ら
の 要 素 は 含 ま れ て い な い こ と に 留 意 し て く だ さ い 。
(中略)
「 い じ め の 芽 」 や 「 い じ め の 兆 候 」 そ れ も 「 い じ め 」 で す 。
(中略)
文 部 科 学 省 は 、 い じ め の 認 知 件 数 が 多 い 学校 に つ い て 、 教 職 員 の 目 が 行 き 届 い て い る こ と の あ か し で あ る と 考 え て い ま す 。
(中略)
い じ め で は な い か と 疑 わ れ る 事 案 に 接 し た と き は 、 学 校 に 設 置 さ れ て い る 「 い じ め の 防 止 等 の
対 策 の た め の 組 織 」 に 必 ず 報 告 し て く だ さ い 。 と は 言 っ て も 、 日 々 発 生 す る 事 案 全 て に つ い て 、 組
織 の 全 メ ン バ ー が 逐 一 集 合 す る こ と は 難 し い と 思 い ま す 。 そ こ で 、 組 織 の メ ン バ ー の 中 か ら 情 報 集
約 担 当 を 決 め た り 、 パ ソ コ ン で 共 用 の デ ー タ ベ ー ス を 作 成 し た り す る な ど 、 全 メ ン バ ー が 集 合 し な
く て も 機 動 的 な 対 応 が 取 れ る よ う 各 学 校 で 工 夫 を し て く だ さ い 。 重 要 な の は 、 ひ と り で 抱 え 込 ま な
い と い う こ と で す 。
このサイトの不満なところは,いじめの定義は書いてあっても,いじめ問題の解決の定義が書かれていないことです.
たとえばここに書いてあります.
あとこちら.
「いじめは、単に謝罪をもって安易に解消することはできない。いじめが『解消している』状態とは、次の2つの条件が満たされているものをいう」と明記。条件の1つは、「被害者に対する心理的または物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)がやんでいる状態が相当の期間継続していること」とし、相当の期間については3か月を目安としている。
もう1つの条件は、「被害者が心身の苦痛を受けていないこと」。被害者本人や保護者への面談などで心身の苦痛を感じていないかどうか確認すること、いじめが解消している状態に至ったあとも日常的に注意深く観察する必要があることを記している。
(4)いじめの重大事態の調査に関するガイドライン
の概要をみると,
○重大事態の取扱について、以下の事項を徹底
・重大事態は、事実関係が確定した段階で重大事態としての対応を開始するのでは
なく、「疑い」が生じた段階で調査を開始しなければならないこと。
・被害児童生徒や保護者からいじめられて重大事態に至ったという申立があったと
きは、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たること。
とあります.窃盗の
「疑い」が生じた段階で調査を開始しなければならないこと。
ということです.
○重大事態の範囲の明確化を図るため、重大事態として扱われたものの事例を示す
・軽傷で済んだものの、自殺を企図した。
・カッターで刺されそうになったが、咄嗟にバックを盾にしたため刺されなかった。
・嘔吐や腹痛などの心因性の身体反応が続く。
・複数の生徒から金銭を要求され、総額1万円を渡した。 など
※これらを下回る程度の被害であっても、総合的に判断し重大事態と捉える場合が
あることに留意する。
とあります.