フジテレビの女子アナ9人が相次いでインスタグラムアカウントを更新
(写真は三田友梨佳アナ、時事通信フォト)
フジテレビのアナウンサー数人が美容室や系列店で無料サービスを受ける見返りに、宣伝協力として店のSNSに登場していた“ステルスマーケティング(ステマ)疑惑”について、6月3日から5日の間に、木下康太郎、宮澤智、堤礼実、久慈暁子、三上真奈、海老原優香、杉原千尋、三田友梨佳、井上清華という9人のアナウンサーが各人の持つインスタグラムアカウントを久しぶりに更新し、反省の言葉を並べた。
発端となった『週刊文春』の報道から約2か月半経ってのことである。
フジテレビは5月28日に行われた書面での定例会見で、遠藤龍之介社長が「外部の弁護士も入れた詳細なヒアリング調査を実施し、社員就業規則に抵触する行為が認められた」と発表。
一方で、疑惑発覚後から「ステマには該当しない」としている。
今回の“インスタ謝罪”について、放送記者が見解を示す。
「局からマスコミに一律の書面で謝罪文を出す手もありましたが、9人ともインスタグラムをやっている手前、区切りの投稿をしないといけないと判断したのでしょう。文章の趣旨は同じですが、それぞれ少しずつ違いが出ており、自分で綴っていると思われます。逆に言えば、各人のステマに対する認識や反省度合いも明らかになりました」(以下同)
パソコンやスマホの前でインスタグラムに反省の文章を打ち込み、一連の騒動に終止符を打とうというスタイルに、違和感を覚える人もいるかもしれない。
「文章だけの謝罪は誠意に欠けます。
どんな表情で書いているのか見えてこないから、本当に反省しているのかという疑念も持たれる。
会見を開くべき、とまでは言いませんが、せめて自分の担当番組などで一言謝罪をすべきでは。
インスタグラムはあくまで個人的な発信の場所であって、マスメディアではない。
“マス”のテレビに出てニュースを読んでいるアナウンサーが数万人、数十万人のフォロワーに向けての発信だけで済ませていいのか、疑問は残ります」
一方で、SNSを使うことで、それぞれの思いが透けて見える面も出てくる。
「文章には、その人の本質や考え方が出てしまう。
ほとんどのアナウンサーは、『報道されていた件について』『一部週刊誌の報道にありました件で』などと具体的には言及していない。
このニュースを誰もが知っている前提で書いていますが、そうとは限らないでしょう。
報道機関のアナウンサーとして、どうなのでしょうか。
また、発端となった媒体名(『週刊文春』)を書かないのも、いかがなものか。
良い感情を抱けないのはわかりますが、悪いことをしていたのは自分たちなんですから。
文章に『!』を付しているアナウンサーもいたし、どこまで本気で反省しているのか読み取りづらいですね」
このままニュース番組を任せられるか
SNSが発達したことで、著名人の記者会見は減り、良いことも悪いことも自らの発信で報告するケースが増えている。
「フジにとっては、一社員がわざわざ会見をする必要はないという判断なのでしょう。
たしかに普通の企業で不祥事が起こっても、上層部が会見しますからね。
ただ、ニュースを読んでいたり、バラエティ番組でタレントのように活躍していたりするアナウンサーもいる。
ネット上では、『都合の悪い時は社員扱いか』と解釈するし、ダブルスタンダードだと嫌われてしまう」
フジとしては、各アナウンサーのインスタ謝罪で幕引きを図りたいところだろう。
しかし、夜の『FNN Live News α』でキャスターを務めている三田友梨佳アナ、春から『めざましテレビ』で総合司会になったばかりの井上清華アナなどエース格が関わっており、事態がすぐに収まるとも思えない。
5月28日、遠藤社長は「“対価性があるのではと疑われるような行為”については、放送人としての自覚が問われる行動であり、関係者に厳正に対応した。
指導が行き届いていなかったことに、社としての責任を痛感している」と話している。
“厳正な対応”について、具体的な言及がなかっただけに、今後の処遇に注目が集まる。
「普通の企業なら、不祥事を起こせば他部署に異動するなど何らかの厳しい措置が与えられるが、フジはどうするのか。
誰にでも失敗はありますけど、さすがにニュースを読む番組を任せるのであれば、視聴者が納得する説明が必要です。
仮に視聴率がたいして変わらなくても、視聴者が彼女たちを信任したという目安にはならない。
本当なら、今の時点で“更迭”されてもおかしくはないですけど、インスタで事態の鎮静化を図るくらいですから……。
交代があったとしても、秋の改編まで待たないといけないんでしょうかね」
“インスタ謝罪”で幕引きでは、視聴者は納得しないのではないだろうか。
三田友梨佳アナがインスタグラムで更新した「一部報道にありました美容室SNSにおける写真掲載について」の説明(Instagramより)
▼ステマとは
■別表記:ステルスマーケティング
ステマ(ステルスマーケティング〉とは、広告・宣伝活動であることを消費者に秘匿し、一般消費者の口コミやレビューを装うなどして実施される、広告・宣伝活動のこと。
当該商品・サービスの関係者が、善意の第三者による公正な判断を装い、当該商品・サービスに高評価(好評価)を下すことで、消費者の購買意欲を刺激しようとすること。
ステマは「ステルスマーケティング」の略であり、その語源は英語の stealth marketing(隠密的マーケティング活動)である。
ただし、英語圏では stealth marketing よりも undercover marketing(アンダーカバーマーケティング)という呼称の方がよく用いられる。
欧米ではステマもといアンダーカバーマーケティングが法的に禁じられている。
日本では、タレント・スポーツ選手・インフルエンサー等によるステマが、ときどき発覚する。
ステマの手法は「有名人に依頼して商品を紹介してもらう」方法と「口コミサイトに高評価レビューを投稿する」方法の2種類におおむね大別される。
どちらにしても、広告目的の「作られた評価」であり、それが秘匿されている、という点に変わりはない。
宣伝広告では商品・サービスの長所ばかりが言及され、難点は隠されるが、口コミは長所も短所も忌憚なく論われる。
商品やサービスの品質および満足度を確かめる手がかりとしては、宣伝より口コミの方が信頼性が高いといえる。
もし自分の好きな有名人がその商品を愛好し薦めているとなれば、より強い購入動機にもなり得る。
もしそれがステマでなく真っ当な口コミ評価だったらの話であるが。
ステマ自体を規制する法律は、2020年現在の日本にはまだない。
たとえば、商品・サービスの内容の一部や欠陥を故意に隠して宣伝・販売を行うことは「景品表示法」に抵触する場合がある。
また、使用経験がない商品の体験談を投稿するような行為は「軽犯罪法」に抵触する場合がある。
ステマは消費者を騙す行為に他ならない。
たとえステマが法的にセーフであったとしても、大半の消費者から倫理的に拒絶される。
いわゆる炎上さわぎの祭状態に至り、不買運動に発展することもある。
有名人がステマに加担した場合は、当の有名人もイメージ低下・社会的評価の低下といった社会的制裁を避けられない。
ステマが発覚した場合に当事者に付与されるネガティブなイメージが、どの程度まで定着するかは、状況によって異なる。
場合によっては何年経っても忘れ去られず、ウェブ検索エンジンで商品名を入力した際に「(商品名) ステマ」のように関連キーワードが提示される状況がずっと続くかもしれない。
企業とインフルエンサーによるステマが発覚して炎上騒ぎに発展する流れの一例。
ある企業が美容関係の新製品を売り出すために、ステマを実施することを決定。
▼<解説全文>
フジテレビへ「右翼の抗議活動」